株式の贈与や相続で利用できる事業承継税制とは?

企業経営情報

会社の経営者は自社株式という財産を所有していますが、会社の業績が良好で成長している会社の株式の価値はどんどん大きくなっていきます。
価値が拡大した自社株式を大量に所有したまま経営者が亡くなってしまった場合、会社の株式にも多額の相続税が課税されてしまうでしょう。

相続税は現金での納税が必要
この相続税が課税されることで一番困るのは、相続税は現金で支払う必要があるということです。
自社株式のみを相続した後継者は納税資金の準備を自分で行わなくてはいけなくなり、用意ができなければ最悪、会社を解散させなくてはいけなくなる可能性も出てきます。
このような問題を解決するため、政府が創った制度に「事業承継税制」があります。どのような制度なのか、その中身を理解しておくと良いでしょう。

事業承継税制とは?
事業承継税制の趣旨は、中小企業が次世代に事業を引継いでくれるなら相続税や贈与税を大幅に減免するというものです。経営者から後継者に株式を生前贈与、または相続させる時に使うことができる制度です。制度が適用されれば株式にかかる贈与税や相続税は最終的に100%免除されます。

事業承継税制を受けるための会社の要件
会社は中小企業者に該当することが要件です。ただし不動産を管理するための法人である資産管理会社に該当する場合、この制度は利用できませんので注意しましょう。
また、制度の適用を開始して5年間は事業を継続させることも必要です。途中でやめてしまった場合には、それまで猶予されていた税金に利息を付けて納めることになりますので注意しましょう。

現経営者と後継者の要件
そして経営者が会社の代表者であったこと、そして会社の筆頭株主であったことが必要です。
後継者は会社を引継いで代表者になること、さらに会社の筆頭株主になることも必要とされます。例えば現経営者が会長になり、後継者が社長になるというケースでも適用されます。
なお、贈与によって株式を後継者に引継ぐ場合には、後継者が3年以上取締役であることが条件です。

雇用を継続する必要もある
後継者は会社の代表者であり続け、会社の株式を保有し続けること、さらに会社の雇用の8割を維持することが必要となります。
中小企業であれば従業員が2割程度減少することも考えられますが、平成27年からは5年間の平均で判定することに改定されています。一時的に従業員が退職などで減ってしまったとしても、平均で8割維持できていれば納税猶予は続行されます。

すぐに免除を受けられるわけではない点に注意!
5年経ってもすぐに免除になるわけではありません。そのため株式は所有し続けることが必要です。株式を誰かに売却したり会社を解散させて現金化したりした場合、それまで猶予されていた税金を支払うことになってしまいます。
なお、5年間条件を守り続けて納税することになった場合、5年間分の利子税(年利0.8%)分は免除されます。

免除されるのは結局いつ?
最終的に免除になるのは後継者が事業承継税制を使って、次の後継者に事業承継することで税金が免除されます。そのため息が長い話にはなりますが、相続税額が大きい場合には利用したほうが良い制度と言えるでしょう。