会社を引き継ぐための相続に関する生前贈与について

事業承継・相続

株式会社で経営を引き継ぐには自社株式も後継者へ引き継ぐ必要があります。この自社株式を計画的に引き継ぐにはどのように引き継ぐかが現経営者には大きな課題となります。後継者への引き継ぎ方法として生前贈与・相続・遺贈・売却がありますが、今回はその中でも「生前贈与」について考えてみましょう。

■生前贈与のメリット

相続や遺贈については現経営者が亡くなり相続が発生した際、現経営者が保有していた相続財産の一部を後継者が取得することになることから、現経営者が希望する通りの結果にならないこともありえます。また、相続発生時点を基準にして相続財産の評価が算定され、相続税が課税され、特に自社株式の評価額は会社の業績や同業の株価などで大きく値動きすることがあるため、対策を講じることが難しくなります。

その点、生前贈与はタイミングを見計らって現経営者の意思で実行できるところがメリットといえるでしょう。自社株式の評価額が低くなっている時を見計らって承継を進めることも可能で、あらかじめ贈与しておくことによって現経営者の相続財産も減少します(ただし、相続が発生する前、3年以内に贈与した資産は、相続財産に持ち戻されて相続税の計算がされます)

■株式を生前贈与するための贈与税対策

株式を生前贈与する場合、気になるのが贈与税ですが多額な贈与税を納めないためにもできるだけ手を打っておく必要があります。

◎暦年課税制度
毎年確実に定額の贈与が可能な場合や、自社株式の評価額の動きがあまり見込まれない、後継者が株式を取得し終わるまでに時間的に余裕がある場合に効果的な方法として有効なのが暦年課税制度です。この制度は、暦年(1月1日から12月31日までの1年間)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額(年間110万円)を控除した後の金額に対して贈与税を課税する方法です。この制度では基礎控除額110万円までの贈与財産には贈与税がかかりませんし、申告も不要になります。

注意すべき点として、自社株式の生前贈与が税務署に認められないケースがよく見られることや、相続税法24条の規定(定期金給付契約に基づく権利の取得)に該当する場合、一括して権利を取得したと認定されてしまい、課税の対象となる危険があることです。これらへの対処法として、株主名簿の名義書き換えを確実に行い、法人税の税務申告書に明示するなどして生前贈与が行われた証拠をのこしておくことが考えられます。

◎相続時精算課税制度
後継者を自分の子供や孫とする場合には、相続時精算課税制度を活用しましょう。この制度は一度により多くの財産(自社株式など)を贈与することができます。相続時精算課税制度は60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に対して、累計で2,500万円までの財産を非課税で贈与できる制度です。それを超えた部分には一律20%の税率で課税されます。この制度を適用すべき最初の贈与が行われた日の翌年の3月15日までに、所轄税務署長に届出書を提出することが必要ですが、1度提出すればその後の贈与については提出する必要はなく相続時まで継続的に適用されます。

相続税計算の際、贈与された財産は贈与された時の価格で評価されます。ということは、この制度を使って後継者に自社の株式を贈与することで、後継者自信の経営努力によってその後に株価が上がった場合でも、相続税には影響がありません。ただし、逆に財産が相続時に値下がりしていると、贈与しなかった場合に比べて相続税の負担が重くなります。

この制度をいったん選択した場合は、暦年課税制度に戻すことはできません。

■まとめ

これらの制度を上手に利用して事業承継を円滑に進めていきましょう。また、相続税に関することは税理士の助けを最終的に得る必要がありますが、相続案件・事業承継案件に強みを持つ税理士を選びましょう。