事業承継で家族信託を活用する場合のデメリットやリスクは?

事業承継・相続

事業承継相続で家族信託を活用する人は近年増加しています。家族信託は、通常の遺言ではできないことが可能になったり、経営者の生存中から死後まで自由な設定ができる、成年後見制度を補うことができるなどのメリットが多くあります。
しかし一方でリスクやデメリットなどもありますので、事業承継で家族信託を行う場合の注意点などを含めてみてみましょう。

【損益通算】
まず信託する財産の中に収益を出している不動産がある場合、信託財産から生じる不動産所得にかかる損失はないものとみなされます。ですから不動産損失と信託財産以外の所得を損益通算することや純損失の繰り越し等はできませんので注意しましょう。
更に信託契約を複数に分割した場合もそれぞれの契約を損益通算することはできない為、これらのことを含めて税理士などの専門家に相談しながら信託契約を結ぶ必要があります。

【税金面のメリットが少ない】
家族信託によって、資産の承継、事業継承という安心は叶えられますが、大々的な税金面でのメリットは少ないと言われています。
家族信託をする事で、節税のメリットを受けるというよりは、経営者の認知症リスク対策、認知症による資産の凍結対策、相続税対策、事業承継対策、共有不動産の対策など様々な問題に対応する方法として家族信託を行うという考え方が妥当でしょう。

【専門家への相談料が高く確定申告の手間も増える】
家族信託は遺言や、成年後見人問題とは違い最先端の財産管理、事業承継ですのでこれらを取り扱っている専門家がまだ少ないという現状があります。
このような背景を受け、もしきちんとした実務経験と信頼できる知識を持った専門家がいても相談料や、コンサルティング報酬が高くなります。
更に、確定申告を行う際には信託財産から不動産所得がある場合はその明細書以外にも信託財産に付随する明細書の作成をする必要があります。
そして資産の一部または全部を信託財産にしている場合、年間3万円以上の収入があれば信託計算書、合計表などを税務署に提出するようになり税務申告の手間が増えるというデメリットがあります。

【まとめ】
家族信託は、現経営者が元気なうちに自由に自分の財産を管理、承継することができるだけでなく、通常の遺言とは違い死後に発生した相続についても決めることができます。
しかし、どのような方法にも万能ということはなく、上記のようなデメリットも存在しますのでそれぞれのデメリットやリスクを視野に入れた上で相続、事業承継の方法の1つとして考えておくようにしましょう。