退職金の勘定科目の仕訳と損金について

経営者のリスク

■退職金の仕訳

退職金は、将来に備えて支払われる金額に対して、企業は備えをしなければなりません。

◎退職給付債務について
企業が従業員に払うことが見込まれる退職金や年金を負債として会計に計上することです。将来に備えて退職給付として一定の割合で会計処理を行います。退職した時点で「退職給付債務」は減少する形です。

◎引当金とは
将来の支払いが確定して金額も想定できるとして、合理的に見積もりができるのであれば会計の損金として計上する事を意味します。

①企業が退職金を支払うケース
退職金を支払うのが、企業自体の場合は、現金預金が減ることになるので、退職給付引当金を減らすことになります。

・例として従業員に支払う退職一時金として現金50,000円の勘定仕訳は
「借方」=「退職給付引当金」= 50,000円
「貸方」=「現金」 = 50,000円

※退職一時金は、現金の資産が50,000円の減少となります。それに対して退職に支払う予定の退職給付引当金の貸方に計上済みが、50,000円の減少となります。

②年金基金が退職金を支払うケース
退職給付の支払い方法を外部の年金基金の積立制度を利用するばあいがあります。このような場合は、退職金は年金基金が支払うことになります。企業としては、退職の時の退職給付債務が減少します。それに対する年金の積み立ての「年金資産」も減少します。

・例として従業員に支払う退職一時金として現金50,000円が年金基金よりの支払いでの勘定仕訳は、
「借方」=「退職給付債務」= 50,000円
「貸方」=「年金資産」 = 50,000円

※退職一時金は、年金資産が50,000円の減少となります。それに対して退職に支払う予定の退職給付債務の貸方が、50,000円の減少となります。

③実際の仕訳方法
退職給付債務も年金資産の両方とも、「退職給付引当金」の勘定仕訳によって会計処理を行います。借方・貸方ともに「退職給付引当金」という勘定科目によって仕分けることになります。この場合は、借方・貸方の勘定科目がおなじなので結果が「仕訳なし」と処理することになるのです。
「貸方」=仕訳なし
「借方」= - -

■役員退職金のメリットと勘定科目

役員の退職金を支払うことで、「会計上費用処理」することで、当期純利益を減らすことができます。法人税の計算から益金に対する損金として計上できるので、純利益の減少は、結果的には税金を減らした分が現金のプラスとなります。

会計上はマイナスでも実際はキャッシュフロー(お金の流れ)が良くなるという事です。ただし、会計の時期によって効果が期待できない場合があるので、注意が必要です。これは、会計上のリスクとして重要な事です。

◎会計処理と税務処理
役員退職金の確定時に会計上は「費用」として処理します。当期純利益を大きく減らす事ができます。
「貸方」=役員退職金= 600万円
「借方」=現預金(又は、未払金)= 600万円

◎引当金計上時の処理
役員退職金のある事業年度分によって処理する場合に引当金として費用計上することになります。
「貸方」=役員退職慰労引当金繰入=100万円
「借方」=役員退職慰労引当金 =100万円

◎退職金確定時の処理
役員の退職時期の引当金の残高は500万円で、確定の支給額が600万円の場合
「貸方」=役員退職慰労引当金=500万円  // 「貸方」=役員退職引当金戻入=500万円
「貸方」=役員退職慰労金  =600万円  // 「貸方」=未払金=600万円

※当期純利益に対する効果は、引当金の残高と実支給額との差額の100万円です。

◎法人税の損金の計上時期
法人税法では、役員退職金の損金算入時期を活用するには、役員退職金の額がいつの事業年度の損金であるかを規定しているので注意しましょう。役員退職金の損金算入時期は、退職金が株主総会などによって確定した事業年度が原則となります。(金額が具体的に定められた日が該当する。)

3月決算の法人が、役員退職金を内定しても法人税の申告では損金の額に計上できません。(債務確定主義によるもの)

※会計上は確定していない場合の費用計上となっても、法人税の申告上で否認して、当期純利益に加算することができます。

◎現金主義の容認
退職金を支払った事業年度では、損金経理をして、支払った事業年度に損金を計上することが認められます。

退職金の勘定科目の仕訳と損金について紹介しましたが、会社の利益や税金の支払いに関係する事なので会計上の管理リスクとして認識する必要があるでしょう。専門的な知識が必要なので経理や会計士などにまかせる事も必要でしょう。