120年ぶりの商法改正が運送実務の責任問題に与える影響

運送物流業情報ラボ

平成30年5月18日に「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律」が成立し、120年ぶりに商法の中の運送・海商の規定が改正されました。

改正の対象となっているのは、

物品または旅客の陸上・海上・航空運送
海商(海上運送のほか船舶・海上保険など)

です。

国際航空運送はモントリオール条約などの適用により、法律関係は自足的に規律されているため改正による直接的な影響はありません。

改正された中で、特に気になる賠償責任関連の部分について一部説明していきます。

荷送人の危険物に対する通知義務

新商法により、運送品が引火性・爆発性など危険性があるものの場合、荷送人は運送人に対し、引渡し前にその旨と運送品名・性質・安全に運送するために必要な情報を通知することが必要となりました。

この通知義務に違反したときには損害賠償責任を負いますが、荷送人に帰責事由がないときには賠償責任を負うことはありません。

ただし実務上は、

・運送の危険性
・危険性に関する情報に対するアクセスの可能性
・危険物への対処の可能性
・荷送人側の性質

などに応じては、帰責事由の有無に関係なく発生した損害賠償責任を負う無過失責任に合意することとなるでしょう。

運送人の責任は1年以内に裁判で請求がされなければ消滅

旧法の場合、運送品の滅失・損傷・延着に対する運送人の責任は、基本的に運送品引渡日から1年で消滅時効によりなくなります。

ただし運送人の悪意による行為が原因のときには、消滅時効は5年になるとされています。

これが改正法により、運送品引渡日から1年以内に裁判で請求されなければ、運送人が損傷の有無を把握しているかに関係なく、運送人の責任は消滅することとされました。

実務上は、約款などで1年または5年の消滅時効を規定することがありますが、いずれも改正後の1年に改めることが必要となります。

ただし1年という期間は、運送品滅失などで損害が発生した後に限り、双方合意のもと延長が可能となっています。

旅客の生命・身体侵害による運送人責任軽減の特約は無効

旅客の生命または身体侵害による運送人の責任を軽減する特約は一律で無効となりました。

ただ、運送の遅延が原因の運送人の責任や、災害発生状況による運送と運送に伴い発生する振動で生命や身体に重大な危険が及ぶリスクのある者の運送は、例外として責任を軽減するといった特約の余地が残されています。