取締役の決断を迷わせないための「経営判断の原則」とは?

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株式会社の取締役など、経営者の判断を裁判所が事故的に審査することに一定の限界を設ける原則を「経営判断の原則」と言います。
この原則に従うと、取締役は基本的に損害賠償責任を負うことがないのか、そもそもどのような原則なのかなど、確認してみましょう。

知っておきたい「善管注意義務」とは?
会社と委任関係にあるのが取締役ですが、取締役は業務執行にあたって「善管注意義務
を負います。
善管注意義務とは、委任された人の職業、専門的能力、社会的地位などから期待される注意義務のことを指しています。
この注意義務を怠り、会社に損害を負わせた場合には過失があるとみなされ、損害賠償責任を負う対象になります。

思いきった判断が例え誤りになったとしても・・・
しかし取締役の業務執行は、確実性が低い状況でも決断を迅速に行うことを迫られることもありますし、ある程度リスクがあると分かっていても挑戦しなくてはいけないこともあります。
しかしその思いきった判断が間違った決断になってしまった時、それらが全て善管注意義務違反判断になり損害賠償責任を負わせることになれば、取締役は挑戦的な決断や判断を行えなくなり事業も停滞するでしょう。
そのため日本の裁判所で、経営判断の原則という理論が発展しています。経営判断のための情報収集と分析、検討などの過程で不注意な誤りに起因する不合理さはないか、事実認識に基づいた意思を決定する過程や内容に著しい不合理さは存在しないか、という部分で善管注意義務違反かどうか判断されます。

例えば会社を買収するケースでは
仮に買収した会社について、株主から役員らの善管注意義務違反ではないかと主張があったとしましょう。このようなケースでは、会社を買収するべきだったのかという点で争われることもありますが、買収自体の是非ではなく買収する際の価格が妥当かどうか争点になるケースが多くみられます。
企業買収には買収の対象となる会社に、法務や財務等の観点から調査を実施し、調査結果をもとに買収の是非やその対価を決めることが通例です。そのため、この一連の流れが行われていないのなら、善管注意義務違反と判断される可能性は高くなるでしょう。
調査結果を踏まえた上で、判断内容に著しく不合理さがないと確認できれば善管注意義務違反には該当しないということになります。

そもそもの法令違反行為は経営判断の原則に該当しない
経営判断の原則の判断は経営者の裁量が基本的に広く認められていますが、経営判断の原則は経営への判断に属する事項についてです。
株主総会決議がなかったなど、そもそもの法令に違反する行為については経営判断の原則で判断されることなく、損害賠償責任を負う可能性が出てきますので理解しておきましょう。