中小企業で相続対策と切り離すことができない「事業承継対策」とは?

企業経営情報

中小企業や個人企業の事業承継は、経営者の相続対策と密接な関係があります。
経営者はいつ退職金を受取るのか、そして自社株式を誰に対してどのように、いつ引継ぐのか、また、相続税はどのくらい発生するかなど、事業承継において不安に感じる部分は色々でしょう。
そのため事業承継対策を考えるなら、会社の経営承継だけでなく経営者がリタイアした後の生活や相続まで見据えながら考えていく必要があります。

リタイア後の先代経営者の立場は?
事業を承継するということは、先代経営者が代表取締役を退任し、後継者が新たに代表取締役に就任する形で成立します。
退任した先代については、その後会社でどのような立場にいるのか、また、経営にその後も関与していくのかで状況が異なります。
完全に会社を退職するケースもあれば、非常勤の相談役や顧問になるケース、または代表権のない取締役に留まるといったケースもあるからです。

役員退任慰労金の支払いについて
いずれにしてもリタイアした先代に対しては「役員退任慰労金」が支給されることが一般的です。
ただし「役員退任慰労金規程」が整備されていなければ退職金の支給は出来ませんので、規程が古い場合には現在の会社の状況に合わせた改定も必要になるでしょう。
支給方法についても多額の資金を一括支給できる余裕があれば問題ないですが、財源がなければ金融機関からの借入や分割支給などを検討しなければなりません。
多額の資金を必要とする役員退職金の支給は、会社のキャッシュフローに大きな影響を及ぼすことを理解しておきましょう。
支給額や支払方法、さらに退任後の報酬などについて、先代経営者と後継者で納得のできるような話し合いと合意が必要です。

自社株式はどのように後継者に譲渡する?
先代経営者が代表取締役を退任したとしても、株式を保有していれば会社の経営について最終決定権を持ち続けることになります。
そのため事業承継とともに後継者に自社株式を譲渡し、後継者は新しくオーナーになることが事業承継として理想的です。
しかし自社株式をいくらで譲渡するべきなのかが問題です。株式の値段は税務上の評価額を基準に考えますが、設立時に出資した時よりも10
や20倍になっているケースは珍しくありません。
後継者がその評価額で買取ることができれば問題ないでしょうが、資金準備ができなければ実現しなくなってしまいます。

・後継者が自社株式を買取ることができないなら
仮に後継者が親族であれば、株式を贈与する方法もあります。しかし一度に贈与してしまうと多額の贈与税が発生するので、株価が下がったタイミングでの譲渡や、相続時精算課税制度の利用、連年贈与を長期的に行うといった方法を検討していくことになるでしょう。
また、事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予)を利用する方法もありますが、制度自体が新しく実績がない上に、適用要件等が複雑です。ただし後継者が確実に決まっているのなら、事業承継を円滑化させる効果が期待できるので、色々な方法があるということは理解しておくと良いでしょう。

単独で判断せずに相談してみることも必要
他にも事業承継における相続対策として、生命保険契約や死亡退職金の非課税枠を活用するという方法もあり、税金、遺産分割、納税資金という視点からでも有効な手法です。
いずれにしても会社の状況などでどの手法を活用すべきか大きく異なりますので、専門家などに相談しながら決めることが望ましいでしょう。