社会保険の法律には健康保険法と厚生年金保険法があります。まず健康保険法には、第3条に「被保険者」の定義として「適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者」と明記されています。
さらに厚生年金保険法でも、第9条に「適用事業所に使用される七十歳未満の者は厚生年金被保険者とする」との記載があります。
役員は適用事業所に使用されていると言えないのに?
一般社員など従業員は会社と雇用契約を締結しますので、適用事業所に使用されていると言えますが、役員の場合は会社と委任契約を締結するため適用事業所に使用されているとは言えません。
しかし法人の役員は一部の例外を除き、社会保険に加入することになっています。昭和24年に「法人の取締役など代表者や業務執行者が法人の業務の一部を担当し労務の対価として報酬を受けている場合には、使用関係があるとして被保険者の資格を取得させるように」という行政通達があっています。
社会保険の被保険者の資格を得るには、適用事業所に使用されることが必要になるため、適用事業所に使用されていると言えない代表取締役や取締役等でも、法人から労務対価の報酬を受けていれば適用事業所に使用されているということで被保険者の資格を取得する取扱いになっています。
役員と一般社員は社会保険の取り扱いが異なる?
取り扱いは役員でも一般社員と変わりありません。法人は社会保険に強制加入ですが、代表取締役が1人で一般社員がいなくても加入する必要があります。
非常勤役員の場合の扱いは?
経営者や役員で、例えば非常勤の場合には社会保険に加入しなくても良いのかと疑問を抱く場合もあるかもしれません。
社会保険に関する法律である健康保険法や厚生年金保険法には、非常勤に対しての定義は明確にされておらず、役員の社会保険加入に関しても条文で明記されていません。
非常勤役員自体が会社法などの法律で定義されているのではなく、一般的な概念によるもののため、勤務実態がどのくらいあるかなどで判断することになるでしょう。
しかし役員は勤怠管理をしていないため、勤務実態に加えて経営に携わる重要性、役員としての業務執行権の有無、役員会議への出席の有無、報酬額の妥当性など、総合的に判断していくことになると考えられます。
未加入でも問題のないケースは?
勤務実態が最低でも一般社員の4分の3未満で、勤務実態を何らかの書類などで証明することができれば未加入でも問題ないでしょう。その場合、役員報酬の額は他の常勤取締役よりも低いこと、業務執行権があるなら業務執行権を無くすということも未加入の要件となると考えられます。
また、社会保険は給与(報酬)額に応じた等級で保険料が決まります。仮に役員報酬の支払いがない場合、等級を決めることができませんので未加入でも問題ないということになります。