職業や立場などにおいて考え方の特性を表す言い回しとして、「〇〇脳」という表現がよく用いられます。職人として相応しい思考には職人脳、学者については学者脳、といった具合です。では、経営者の特性を指す経営者脳を考えた場合、どのような要素が挙げられるでしょうか?
「経営者脳」と言っても人それぞれ
「〇〇脳」という表現には概ね「〇〇であれば皆、物事の見方考え方や立ち居振る舞いについて、一挙手一投足に至るまで全て同じでなければならない」といったニュアンスが暗に含まれています。
しかし、人間の特徴や性格は人それぞれ。職人であれ学者であれ、そして経営者であれ、その人を構成する全ての要素が完璧に一致しているわけではありません。どのような立場にある人であれ、その人の全てを類型的に判断することは不可能であり、レッテル貼りのように
型に当てはめること自体が無意味と言えるでしょう。
経営者においても、その人間性は人それぞれ。著名な経営者として世間の耳目を集める人々を見ても、1人1人独自の個性に富み、決して一括りにして語れるものではないわけです。
経営者としての考え方の共通部分
経営者の人間性は様々ですが、企業の舵取りを担うという役割においては一致しています。その果たすべき役割をこなす上での有益な思考として捉えるならば、その範囲内に限定して経営者脳という表現を用いることもできるでしょう。
経営という行為には共通してどのような目的があるのか? そういった点に着目すれば、経営者に共通する目的達成のために望ましい物事の見方考え方が浮き彫りとなるわけです。
あらゆる企業の存在意義は、事業を通して社会に関与するところにあります。企業に属する一員として経営者に課された役割は、事業を持続あるいは発展させるため、企業の維持と拡大を目指すことと言えるでしょう。そういった視点に基づけば、経営者に必要な考え方とはどういったものかが見えてきます。
具体的には、現実的かつ有効な計画を立てる戦略的思考、計画を実行に移す決断力、収益とコストに着目する財務意識、といったところが基本となります。
企業活動を継続し発展させていくためには、まず収益を得ることが不可欠です。それにはまず、収益を見込めるような事業計画を立てることが重要となります。あらゆる事態を想定に入れ、その対応策を含んだ計画であれば、成功する確率がそれだけ高くなるでしょう。
そういった計画性を持つには、あらゆる知識や情報を吸収し、それらを分析する意識を持つことが有効です。いくら良い計画が立てられたとしても、それを実行に移せなければ机上の空論に終わります。
そうなってしまわないために必要となるのが、経営者としての決断力です。それを培うには、共に事業を行うメンバー間の強い信頼関係が重要です。実際の業務に携わる従業員の能力を正確に見極め、そこに信頼を置ける状態に達していれば、自信を持って判断することができるでしょう。
収益を上げる活動を目指す際には、コスト感覚も欠かせません。企業の経営のどの部分にいくら元手が掛かっており、それがどのような利益に繋がっているのか、適切に把握することで企業の財務適正化を図ることができます。そうすることで、より苦境に強い経営が確立されます。
それらの点を踏まえつつ、経営者自身の人間性が持つ個性や長所を職務に反映させることも、役割を担う上でプラスとなります。自分本来の持ち味を活かすことができれば、それが経営者としての魅力に繋がります。経営者脳という画一的な意識に囚われるあまり自分の良い面を封印してしまうよりも、成果を生み出すチャンスが多く巡って来やすくなるでしょう。
まとめ
以上のように、経営者に有益な意識として、計画性・実行力・コスト感覚などが挙げられ、それに自分自身の人間的長所を加えることもまた有効であることを見てまいりました。
功績を収めた多くの経営者も、それぞれ自分自身の持ち味をうまく活かしてきた方々ばかりです。経営者はこうあるべきという型に拘り過ぎず、自分らしさの中にある良い面を前面に出すことが肝要です。