中小企業の事業承継において、現経営者が保有する自社株式をどのように後継者に譲るかが問題になります。
現経営者が代表取締役を退任しても、株式を保有し続けていれば経営における決定権を持ち続けることになります。
そのため自社株式も事業承継時に後継者に譲り渡して新たなオーナーを迎える形が理想と言えるでしょう。
後継者に自社株式を譲渡する際に問題となることとは?
後継者に対して自社株式を譲渡する時、問題になるのは自社株式の譲渡金額です。
通常は税務上の評価額が基準になりますが、会社設立時の自社株式の評価額が事業承継の時には10~20
まで高くなっているケースもめずらしくなく、後継者が取得資金を準備できない可能性があります。
後継者が親族なら贈与による譲渡も検討できますが、一度に贈与すれば贈与税が多額に発生します。
そのため株価が下がったタイミングで譲渡するか、相続時精算課税制度を利用する、もしくは連年贈与といった方法が検討できるでしょう。
事業承継税制の利用の検討も必要?
さらに平成21年度の税制改正により創設された相続税や贈与税の納税猶予制度である「事業承継税制」の利用も検討しましょう。
適用要件など複雑ではあるものの、親族内で誰を後継者にするか決まっている場合には事業承継を円滑に進行させる効果を得ることもあります。
自社株式を後継者に円滑に引き渡すことができて事業承継は完成しますので、後継者が決まった時点で計画を策定し実行していくことが必要になるでしょう。
事業承継税制とは?
自社株式の処分ができずにやむなく廃業という選択をせざるをえない会社もあります。そのような状況に対応できるように国は「経営承継円滑化法」を制定しました。
この経営承継円滑化法は、遺留分の民法特例・金融支援・相続税と贈与税の納税猶予の3つから成り立ちますが、事業承継税制はこのうち相続税と贈与税の納税猶予のことを示します。
・免除ではなく猶予であることに注意
事業承継税制は、現経営者が所有する自社株式を相続や贈与で親族内後継者に承継する際に、相続税や贈与税のうち一定額の納税を猶予する制度になっています。制度を活用するには「事前認定」と「事後確認」といった手続きが必要です。
また、免除ではなく猶予する制度ですので、要件に満たなくなった際には猶予税額を納税する必要があります。
ただし手続きや猶予税額の計算が複雑なため、現経営者の財産総額や財産全体に占める自社株式割合、さらに相続割合などでさほど効果がでない可能性もあります。
ただし会社の状況次第で事業承継に役立つため、相続税や贈与税の対策の1つとして認識しておくと良いでしょう。
相続や贈与による自社株式の譲渡への対策は事前に
事業承継において問題となるのが自社株式をどのように後継者に譲り渡すかです。親族に承継する場合には相続や贈与による譲渡を検討することになるでしょうが、税金が関係するため事前にどのような対策があるかを理解しておくことが必要となるでしょう。