事業譲渡では譲渡される会社に事業のどこまでが承継される?

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事業譲渡とは会社が営む事業の全て、または一部を譲り渡すことです。会社にとって重要な事業が譲渡された場合には、株主や会社の債権者にとって大きな影響を受けることになりますので、合併や会社分割などと同じく株主総会の決議が必要です。

事業譲渡とは?
事業譲渡とは一定の営業目的のために組織化され機能している財産の全部、もしくは重要な一部を譲渡することです。なお、全部ではなく一部譲渡の場合、譲渡資産の帳簿価格が総資産額の5分の1を超えないものについての特別決議は必要ありません。

手続きは合併に準じた内容
会社法の規定では事業譲渡は合併に準じた手続きを必要とします。株主総会の決議を行い、それぞれの会社の規模で事業に該当するか判断するため慎重な審査が必要です。
法律手続き要件が満たされていなければ無効の訴えを提起される可能性が出てきますが、会社の規模によっては株主の利益を害することがないと判断される場合のみ簡易な手続きで行っても良いとされています。

事業譲渡と合併との違い
事業譲渡が合併と異なるのは、権利義務が包括的に承継されないという点です。会社の債務は引継ぐ必要がなく、偶発的債務も遮断できます。
事業譲渡は個別で権利を移転するのでこのようなリスク回避が可能です。譲り受ける側は、債務の有無や将来の訴訟される可能性などを踏まえて、事業譲渡の事業範囲や種類の選択ができます。

事業譲渡と会社分割との違い
事業譲渡と会社分割は似たような効果を持っていますが、例えば事業譲渡における権利承継は特定承継で、承継する債務の範囲を特定できます。会社分割は包括承継なので偶発的債務も承継します。
また、事業譲渡では許認可は承継されませんので譲受会社が新しく申請しなくてはなりません。会社分割ではそれぞれの業法によって承継されるか定められています。

事業承継に事業譲渡は活用できる?
事業承継の方法に事業譲渡も不可能ではありませんし、手続きも簡素であることが特徴だと言えるでしょう。
合併であれば存続会社も消滅会社も、株主総会の承認や合併契約書を作成するといったことが必要ですが、事業承継は要件が合併よりは厳しくありません。
事業譲渡では権利などが包括的に承継されませんので、譲渡契約で承継する権利の範囲を決めておく必要があります。債務についても選択的に承継することはできます。
ただし法律で契約書の策定が定められていないので、条項をしっかり盛り込んでいくことも必要となるでしょう。

事業譲渡を選択する場合
また、事業譲渡では雇用関係を移転する場合に従業員に個別に同意を得る必要があります。手続きなどは簡素化されていても、債権者や労働者などに同意を得る必要があるという点は理解しておくようにしましょう。