事業承継による相続に関係する税金の優遇制度

企業経営情報

事業承継を行う際に注意したいのが課税される相続税や贈与税です。中小企業が相続の際に発生する税金が気になり、事業承継がなかなか進まないという状態になることは問題です。
そのため事業承継をできるだけ円滑に進めることができるように、経営承継円滑化法が制定となり、税制でも事業承継関連税制が設けられました。

事業承継税制の制度とは?
株価の評価も高くなると課税される税金も高くなるので、従来では相続税や贈与税の支払いのために会社が後継者から自己株式を買い取って税金を納め解決していました。
しかしこの方法だと会社の借入金が増え自己資本は低下しますので、このような負担を回避するための制度が事業承継税制です。

事業承継税制のメリット
事業承継税制の制度は、後継者が相続などで会社の株式を取得した場合など、一定要件を満たすことで相続税80%分の納税が猶予されます。

事業承継税制を適用するための要件
事業承継税制の制度は一定要件を満たすことが必要ですが、被相続人、経営承継相続人、認定対象会社それぞれに要件があります。

●被相続人の要件
・被相続人が代表者であった(相続開始直前に代表者である必要はない)
・被相続人が代表者だった当時、被相続人と同族関係者でその会社の発行済議決権株式総数の50%を超える株式を保有していた
・被相続人が代表者であった当時、同族関係者内で筆頭株式だった
・確認時および相続開始時に、同族関係者内で筆頭株主だった(同族関係者から経営承継する相続人である特定後継者を除いた上での判定)

●経営承継相続人の要件
・会社の代表者である(相続開始後5か月経過時に代表権を有している)
・被相続人の親族である
・同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の過半数の株式を保有し、同族内で筆頭株主である
また、贈与税の事業承継税制の適用要件は、相続税の場合とほぼ同じですが経営承継相続人の要件に20歳以上であることと、役員就任から3年以上が経過していることという要件が加えられます。

●認定対象会社の要件
まず、次に挙げる大臣認定対象外の会社ではないことが必要です。
・上場会社
・経営承継円滑化法上の中小企業者に該当しない会社
・風俗事業の関連会社
・実質的な子会社が上の3つの要件のいずれかに該当する会社
・総収入金額がゼロである会社
・常時使用する従業員がゼロである会社
・相続開始日以降5か月経過する日の常時使用する従業員数が、相続開始日と比較した場合8割未満である会社
さらに資産管理会社の株式には納税猶予制度は適用されません。次の2つのうち、いずれかに該当する場合には制度の適用はされません。
・資産保有型会社
特定資産合計額÷総資産価額≧70%(想像開始直前期の簿価を基準とする)
・資産運用型会社
直前期の特定資産運用収入÷相続開始直前期の総収入金額≧75%

事業承継での相続税問題を解消するために
事業承継税制の制度は相続だけでなく贈与の場合にも適用となるため、経営状況が良好な優良企業の場合、株価評価が高いと相続税も上がるので知っておきたい制度です。
中小企業の株式が世代間承継の際に大きな税負担を負わなくて良いように、事業存続をサポートする制度と言えるでしょう。