使用者が被害者に対して、損害賠償金を支払った場合、被用者に支払った賠償金は求償できるのでしょうか?使用者の求償権や、求償権の制限などについて詳しく見てみましょう。
【使用者の求償権とは】
使用者の求償権について民法では以下のように定められています。
・ある事業のために、他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に損害を与えた場合その責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及び、事業の監督について厳重な注意をした場合、または相当な注意をしても防げなかった場合は、この限りではない
・使用者に代わり、事業を監督する者も、前項の責任を負う
・使用者または、監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない
とあります。
しかし、いくら使用者にも責任があると言っても実際に不法行為を行ったのは被用者(従業員)ですので使用者も従業員に対して損害賠償を求償することができます。
使用者責任とよく言われますが、前述の通り使用者は被用者を雇うことで利益を得ているため、被用者を雇うことで生じた不利益についても責任を負うという解釈になります。
【求償権の制限】
使用者の求償権の制限については、以下のような要素が挙げられます。
・事業の性格
・事業規模
・施設状況
・被用者の業務内容
・被用者の労働時間、勤務形態
・加害行為の程度
・被用者による加害行為の予防、対策、損失の軽減などの使用者側の配慮
上記のような事情を考慮し、損害の公平性を判断しながら使用者の求償権は制限されます。
【求償権時効】
求償権にも時効があります。一定期間行使をしなければ、権利そのものが消滅してしまう消滅時効というものです。
消滅時効は、権利が消滅してしまう期限のことを言い、民法では権利を行使できる場合でも、一定期間行使をしなかった場合はその権利が消滅します。
求償権の時効は、商行為による保証委託の場合は5年となっているの、基本的には5年と覚えておきましょう。その他の場合は10年となっています。
保証人が死亡した場合の求償権も、法定祖族分割で相続することになり、妻と子供2人の場合は、妻が2、子供がそれぞれ1の割合で相続されることになります。
求償権は、普段あまり聞きなれない言葉ですが、自分が不法行為を行ったわけではなく関係ないと思っていると、後に大きなトラブルになってしまいます。
求償権は、経営者などには必ず関係してくる権利ですので覚えておくとよいでしょう。