所有と経営の分離は企業の所有者である株主ではなく、優秀な経営陣が会社の経営を行っている状態をいいますが、株主はお金を出して経営を依頼する人、経営者は株主の依頼を受けて経営する人と役割分担を明確にしているのです。企業が発展するにつれ分担されるようになることが多いのですが、果たして所有と経営の分離は企業へどのような影響をもたらしていくのでしょうか。
■企業活動への影響
株主らが経営者に求めるのは、株主の意向を汲み取り株主の財産をより効率よく運営する能力があるかということになります。株主が経営者を選び、経営者が経営をするのが「所有と経営の分離」で、間違っても経営者が株主を選ぶわけではありません。そのようなことから、企業は株主の利益のために企業活動をすることが望まれることとなるのです。
しかし、企業の役割とは利益の追求だけではなく、企業の成長を意識しなくてはいけません。そこで、優秀な人材を集めることや人材開発をすることを経営陣としては投資として考えることもあるでしょう。ただ、優秀な人材を確保するためには人件費がかかります。また、研究開発費なども中期的な費用として捉えられます。
そこで問題になるのが、そのコストです。ここで問題となるのは、より多くの利益を生むことを望む株主に支持されるのかということです。株主の利益を最大化することは、経営者が最優先すべき責務ともいえるからです。
■持株数で影響すること
所有と経営の分離と似ている言葉で所有と支配の分離という言葉があります。株主は企業の所有者であり、株主総会で取締役を選任し、また、解任する権限をもつことができてしまうということです。持ち株比率に応じて株主の権利(支配権)が変わってくるので、持株比率は重要な経営指標といえます。
株主が一人であれば支配権は一人に帰属しますが、株主が複数いれば出資割合に応じて支配権の範囲が変わってきます。株主は経営を左右する重要な存在なので持株比率は経営をするうえで重要な経営指標になります。多くの大企業は株主と代表取締役が分離していますが、中小企業の多くは分離していないでしょう。
その中小企業を例に挙げてみると、ほとんどの中小企業は代表取締役自身が株式を2/3以上保有しています。2/3以上の持株比率の権利は、取締役の解任、定款の変更、合併や解散、会社経営に関する重要な事柄を決定することができる。株主総会の特別決議ができる。などになります。2/3以上の株式を保有せずに代表取締役に就任していると、持株比率の勢力次第では、代表取締役を解任されることもあり得るのです。
■まとめ
中小企業の場合、株主と取締役が同一であることが多いので、所有と経営の分離といわれてもピンとこないかもしれませんが、今後、会社規模を拡大していくことを検討しているなら、企業の経営が専門・複雑化していく中、経営を確認するための知識や時間が持てない方が出資をし、株主となる場合のリスクも考えておいた方がよいでしょう。