働き方改革の一環とし、政府が推奨している副業。労働者側は収入が増加したり、やりたいことにチャレンジできるなどのメリットがありますが、副業解禁をすることで、企業側にリスクはないのか気になるところです。ここでは、副業解禁で受ける企業側のメリット、解禁するにあたり経営者が備えておきたいことをまとめてみました。
副業解禁で従業員の質が上がる
副業をすることで、本業がおろそかになって、生産性や能率が悪くなってしまうのではないかと考える経営者が多いのですが、実は、副業先でスキルや知識、経験を得たことで従業員の質が高まるという、良い影響が出ている事例があります。その他、企業にとってのメリットは以下のようになります。
●副業で得た情報や人脈を、事業機会の拡大につなげられる。
●従業員の定着率につながる。
●従業員のモチベーションアップにつながり、主体的に働けるようになる。
優秀な人材ほど、自己研鑽や収入増加に興味を持っていることから、副業解禁をすることは、会社にとってもメリットがあるようです。
企業側の性質から副業を制限できる
大手の企業が副業解禁となる中、副業の制限が妥当だと考えられる会社もあります。裁判例では、「従業員の労働時間外の行動を企業が制約することができる」としていることもあり、その判断を決める事項として、以下のようなケースを挙げています。
●労務提供上の支障となる場合。
●企業秘密が漏洩する場合。
●企業の名誉、信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合。
●就業により企業の利益を害する場合。
会社の業務の性質上、従業員が副業をしてしまったら、上記のような恐れがある場合には、副業を制限できるものとなります。
就業規則の見直し
副業解禁となると、就業規則の見直しも検討しなければいけません。しかし、大幅な変更はない会社も多く、むしろ、変更をしなくても良い会社もあります。
就業規則の服務規律に、「会社の許可なく他人に雇入れられること」と記載されている場合は、会社の許可があれば問題ないということになります。そのような場合は、改めて就業規則を変更する必要はありません。
また、「副業及び兼業は全面的に禁止する」と記載されていれば、「副業は許可制とする」というように、簡単な文言の差し替えですみます。
リスクに対応できる規程を作成する
会社が副業を認めるにあたって、実質的に重要となるのは副業規程です。副業規程をリスクヘッジした内容にすることで、対策を講じることができます。取り入れたい内容は以下のようになります。
●会社に無許可で副業を行うことを禁止する旨や、無許可副業を行った場合の懲戒処分等。
●許可しない副業先の基準(利益相反になる可能性の高い同業他社、風俗業など、自社の評判をおとしめるような副業)
●本業に支障をきたした場合の取消。
●機密情報漏洩の禁止や漏洩した場合の懲戒処分、損害賠償請求等。
まとめ
現状では、副業を解禁している企業は多くありませんが、メリットが認知されれば、今後さらに注目が集まりそうです。自社で検討する場合には、リスクに備えた規程などを作成していくことをお勧めします。