現在の日本は毎年多くの企業が後継者不在に悩み、結果として廃業に追い込まれています。業績が低迷し事業を続けられなくなるならまだしも、後継者が見つからずにやむなく廃業するしかないという状態は企業にとって納得がいかない状況だと言えます。
経営者の平均年齢は高齢化
後継者不在で悩む企業のほとんどが中小企業ですが、東京商工リサーチの「2016年全国社長の年齢」調査によると平均61.19歳で、団塊世代の社長交代が進んでいない状況が顕著にあらわれています。
これまで多かった親族への事業承継を行う企業も、20年前の約半数まで減少し中小企業の多くが事業承継に悩まされています。
中小企業が後継者不在で悩む背景とは?
中小企業に後継者が存在しない理由の1つに将来性があります。大企業よりも経営環境が厳しく、事業を積極的に受継ぎたいと考える人が少なくなっているようです。
さらに若年層の社会に対する意識なども変わってきています。経営者の子息や子女であっても、高学歴志向により大学卒業後には大企業に就職することを目指す傾向も強くなっていると言えるでしょう。
廃業を選択せざるをえない理由
そして中小企業が事業承継できず廃業に追い込まれるまでに、いくつかの問題点が考えられます。
・事業承継にはコストがかかる
まず事業承継を行うにあたり、現在の企業の状況の分析を行って抱えている問題点を明確にしておく必要があります。承継後のフォローも重要ですので、人件費など様々な費用が発生するでしょう。
・事業承継には時間がかかる
経営者の多くは60歳以上で事業承継に費やすことができる時間も限定されます。しかし短期に事業承継を完了させることはできませんし、後継者教育や承継後のフォローも含めると数年間に及ぶこともあります。そのため時間や体力的に厳しいケースも見られます。
廃業を決めた場合に生じる問題点
仮に事業承継ができないことを理由に廃業を決める場合、どのような問題が発生するのでしょう。
・従業員の解雇
事業を廃業すれば当然従業員は解雇しなければならなくなります。企業のために誠心誠意働いてくれた従業員を解雇することは精神的にも負担がかかるでしょうし、退職金などで費用も発生します。
・事業の中止
今進めている事業は廃業によって中止するしかなくなりますので、取引先や仕入れ先、そして顧客との関係は消滅してしまいます。
・資産売却のリスク
廃業すれば不動産や機械などの固定資産は売却することになると考えられます。ただし希望する価格で売却できるとは限りません。
廃業ではなくM&Aも選択肢として検討する必要性がある
これらのことを考えた場合、もし廃業を検討しているならM&Aも選択肢の1つとして検討する必要があります。
M&Aにより、事業、従業員、取引先、資産などはそのまま承継できるでしょう。費用はかかりますが、事業に見合うキャピタルゲインを得ることができ、廃業に伴って生じる費用は抑えることができます。
何より事業が承継されることで、現在進行している事業を中止することなく、反対に拡大や発展することも期待できるでしょう。