前の所有者の所有権を引き継いで取得する事を承継取得といいます。
承継取得には、売買や贈与、契約で所有権を移転するケースや、権利者が亡くなった事による相続での所有権の移転なども含まれますが、権利状態をそのまま引き継ぐ形です。
権利の取得にはこの様な承継取得、それとは別に前の権利者には関係なく取得する原始取得がありますが極めて例外なケースに限られるので、一般的な権利の取得は承継取得です。
・承継取得と原始取得の違い
権利状態をそのまま引き継ぐという事は、前の所有者の権利の付随状態もそのまま引き継ぐ事になります。
例えば土地の所有権を引き継いだ場合には、土地に対して抵当権や地上権が設定されていればそれもそのまま引き継ぐ事になります。対して原始取得なら、権利状態は白紙になるので承継の際にはそれらは消滅します。
事業の承継取得で利用したい税の特例措置
中小企業の後継者が事業を次世代に承継取得させたい場合、相続税や贈与税、所得税などがなるべくかからないために特例措置を利用する事ができます。
それぞれ適用条件などもありますが、おおまかにどの様な特例措置かを確認しておくと良いでしょう。
なお、対象となるのは非上場株式を相続や贈与で取得した後継者や、特定小規模宅地を相続した後継者などです。
・非上場株式に係る納税猶予制度(相続税)
「経営承継法」で経済産業大臣の認定を受けた非上場中小企業は、後継者が先代経営者から相続で自社株式を取得した場合、自社株式に対する相続税の80%について納税猶予が可能です。
・非上場株式に係る納税猶予制度(贈与税)
同じく経営承継法で認定された非上場中小企業は、後継者が先代経営者から一括贈与で自社株式を取得した場合、自社株式に対する贈与税全額の納税猶予が可能です。
・特定小規模宅地の減額(相続税)
400㎡までの特定事業用宅地、240㎡までの特定居住用宅地について、評価額80%を減額する特例です。
・非上場株式を自社に売却した場合の特例(所得税)
非上場株式を相続した個人に対する特例制度で、相続税の申告期限から3年以内に発行会社に相続株式を売却した場合に、最高50%の累進課税であるみなし配当課税ではなく、譲渡益全体に対する譲渡益課税20%が適用されます。
・相続時精算課税制度(相続税、贈与税)
また、贈与税申告の際に「相続時精算課税選択届出書」など必要書類を添付する事によって、贈与時には軽減された贈与税を納付し、相続が発生した時には相続税で精算するといった制度が利用できます。
事業税対策の際には税も踏まえて検討を
この様に事業を後継者が承継取得する時に活用できる税の軽減制度は色々あります。どの制度が適用されるかなどを踏まえて、改めて事業承継対策を検討していくと良いでしょう。