利益のためにはリスクは必要?
利益を追求するために危険とわかっていても取引を行うことをリスクテイクといいます。国際的に日本企業はリスクを取らない傾向にあり、そのことが収益力や経済成長を弱くしていると言われています。
平成17年に日本の破産法が新破産法に改正され、差し押さえを受けない自由財産の範囲が広げられました。しかしアメリカでは既に設けられている家屋差押免除は、日本ではまだ導入されていない状態です。この免除制度が日本でも導入されれば、今後事業に再挑戦してみようというリスクテイクを積極的に実施する意欲にも繋がるかもしれません。日本の国自体が保守的な考えてあることも、リスクテイク力を弱くすることに繋がっていると言えるでしょう。
高いリスクのある建設業の資金繰り
他業種と比較した場合、建設業の資金繰りは非常に複雑で大変です。支払いが先という取引や、前受金が先という取引もあります。資金繰りの上からは損益状況を把握することは不可能ですので、資金繰りが解決したから利益が出ているかといえばそうではありません。建設業界は債務超過の企業が多く、資金繰り対策は何とかできていても財務状況は資本を負債が食潰している場合も多く見られます。
リスクを取るなら計画と管理を徹底させたいが…
ではなぜ資金がショートしてしまうのか、それには建設業特有の事情があります。入金予定がいつになるかはっきり確定していない取引の場合、ある程度余裕のある資金が手元にないと資金不足に陥る可能性が高くなります。例えば建築一式を引き受けた場合、着工金、中間金などを入金予定に組み入れるとします。しかし着工が遅れればたちまちその予定が崩れてしまうでしょう。そして入金時期が引き渡し時や完成検査の後という場合には先に支払いをする必要があるため、入金と支払いの時期をしっかり調整して可能な調達範囲での充当を行う計画が必要になります。ただ建設業界の作業の流れなどからも、計画が立てにくい状況なので正確な資金繰り表が作成できないのです。
融資依存が資本を食潰すことに
他にも注意したいのは重機車両など固定資産へ投資している場合です。せっかく揃えた重機車両による効果が得られなければ現金が形として残っただけになります。他にも会社から借入した事業主が他事業へと投資するなど、本業の利益が有益に活用されていないということはないでしょうか。そうなれば結局は融資に依存することとなるでしょう。資金繰りとしての帳尻は合わせることができても、利益が出ませんので負債が資本を食潰すといった状況に陥ります。中小企業の資本金は多くが1千万円から3千万円であることがほとんどなので判断をミスすると債務超過に陥る可能性が高いでしょう。
リスクテイクに挑むなら
利益を追求するのであれば、リスクテイクということも確かに必要でしょう。しかし今一度、先送りにしてはいけない問題を見直す必要があるかもしれません。