退職金とは「のれんわけ」「功労報償説」「賃金後払い説」「生活保障説」があるといわれています。当初はのれんわけから始まった退職金も今では功労報償説や生活保障説の方の意味合いが強くなってきました。しかし、今ではそれが企業経営を揺さぶる大きな問題となってきています。それでは、退職金制度の見直すポイントはどのようなものがあるのかこの記事で見ていきましょう。
■知っておきたい退職金を取り巻く環境
◎賃金の高騰
退職金の計算方法として多く見られるのは、退職時の基本給勤続年数による係数となっています。この方式でいくと、長く勤めれば務めるほど退職金額がより有利になるため、人材確保が厳しい時代には労働者を引き止めるためには有効な方法でしたが、高度経済成長長期(バブル期)における賃金の高騰により、制度設計時の賃金より高騰している賃金での退職時賃金も上がっているので支払い額が上がることになります。そのような背景から自社で退職金制度をやり繰りをしているのであれば経営の圧迫にもつながります。
◎勤続年数の長期化
厚生労働省の賃金構造基本統計によると、勤続年数は年々長期化しています。特に55歳~60歳にかけた団塊世代の長期化が目立ちます。今、団塊の世代に属する労働者の人たちが定年退職ゾーンに入っています。勤続年数の長期化と併せてこれまで以上に多額の退職金の支払いが予想されます。
■見直しポイント
◎退職金をポイント制に切り替える
これまで基本給勤続年数による係数で求めてきた退職金をポイント制退職金へと見直す考えです。ポイント制退職金は「勤続年数」「職能」「職務等級」「役職」などの評価要素をポイント化するもので、計算方法としてはポイントを一定期間ごとに従業員に与えられたポイントの累計に1ポイント当たりの単価を乗じて退職金を算定することになります。職能ポイントと勤続ポイントの組み合わせや、職能ポイントだけで計算するケースもあります。
【職能ポイント】
成果主義的な給付設計として取り入れたいのは従業員の職能資格に基づき与えられる職能ポイント制度でしょう。ポイントの格差が一定範囲内であることや適正な年金数理計算がおこなわれることなどを条件に、厚生年金基金の加算部分(「厚生年金基金の設立要件について厚生年金基金設立認可基準要領)及び確定給付企業年金(2002年3月29日付厚生労働省年金局長通達「確定給付企業年金制度について」)で運用可能です。
【勤続ポイント】
年功的な給付設計となるのが勤続年数に基づき付与される勤続ポイントです。こちらのポイントは昇格スピードの遅い従業員にも一定水準の給付を保証するために設けられる場合が多く、勤続ポイントの付与は全勤続年数について同一ポイントとする方法と、勤続年数の区分に応じて異なるポイントを付与する方法があります。
◎導入時の留意点
ポイント制退職金を導入する場合は、機能・職務等級制度等の資格制度や職務ランクが整備されていることが必要です。また、職務資格制度等の運営を年功的に行うと制度の目的が失われる、給与との関連性がなくなるためポイント単価の引き上げなどによる給付水準の見直しの必要性有無の検証を定期的に行う必要があるなどの点に留意することが必要です。
■まとめ
見直しポイントとして、将来の環境変化に対応できるよう、退職金は20年30年と長期的に考えていくものであるため、現行制度のように退職時の賃金に連動していると将来の賃金の変動が退職金に大きく影響することから、留意点を踏まえながらポイント制度にシフトすることも視野に入れておいた方が良いかもしれません。