外部的な名誉が毀損されれば、社会的な評価が低下してしまいます。
会社経営においても、社会的評価を下げないように注意が必要ですが、名誉毀損などにより評価に影響したときには、訴訟も検討することが必要になる場合もあります。
しかし被害を受けた会社側が、どれほど不本意だと感じたり真実ではなかったりする内容の言動だとしても、その言動が社会的評価を低下させることと認められなければ名誉毀損は成立しないとも考えられます。
不愉快だけで名誉棄損は成立しない
たとえばインターネットのクチコミなどで、「普段〇〇社の社長は高級外車を使っている」という内容の投稿があった場合はどうでしょう。
実際には高級外車を所有しておらず、節約しながら国産車を普段利用していれば、不本意だと感じてしまうかもしれません。
しかし高級外車を使っていることが、社会的評価を低下させることとは考えにくいと判断されれば、名誉毀損には該当しないといえます。
単に不本意と感じることや不愉快な思いをしただけでは、名誉棄損は成立しないということです。
社会的評価低下の概念とは
刑法で名誉毀損罪は「抽象的危険犯」とされ、人の社会的評価を低下させることや、その具体的危険を発生させたことは必要ではないことを意味します。
社会の評価は目に見えないため、実際に社会的評価が低下したことの証明は難しいからといえます。
民法でも人の社会的評価を低下させたことを必要としておらず、危険性を発生させたことで足りるとしています。
名誉毀損に該当しないケース
たとえば社会的評価を低下させる内容を公開したケースだとしても、名誉毀損にならず正当化されることもあります。
その例として、次のようなケースが挙げられるでしょう。
・事実を摘示しているケースで、表現内容が「公共の利害に関する事実」であり、目的が専ら公益を図ることで摘示された事実がその重要部分が真実である証明をしているとき
・意見・論評を表明しているケースで、表現内容が「公共の利害に関する事実」であり、目的が専ら公益を図ることで意見・論評を前提としている事実がその重要部分が真実であることを証明しているとき
名誉毀損に該当すると考える表現だとしても、一定要件を満たす場合には責任を負わなくてもよいという扱いがされているのは、表現の自由が重要な価値を持つと考えられているからともいえるでしょう。