経営者にも「アート経営」が必要だと言う論調が出回っています。経営者の中には「本来の経営スタイルでは役に立たないのか?」「何故、美意識が経営に関係するのか」と不思議に思う方も多いと思います。最近の情報には「経営」と「美意識」を関連付けて発表しているものもあるので、その関係性や思考について解説していきましょう。
経営に美意識は必要なのか?
美意識とはアートです。経営者がアートに対する美意識を高めると何が得られるのでしょうか。経営とは論理的な思考で成り立っているように思えます。そのため、感性や直感などが活躍するアートでは、美意識による芸術性が求められるので、対極にあるように思えます。
アート経営やアート型思考が生まれた理由
人間の脳には、右脳と左脳が存在しています。それぞれが活躍する分野は異なっている為に、右脳の役割は「感覚的で直感的な働き」を担っています。一方の左脳は「分析能力や計算能力など」に長けている働きがあります。
見て分かるように経営に関するビジネスの分野においては、左脳の働きである論理的な思考による分析を行って、計算能力や判断力から結果を導き出しています。このように経営で必要な思考とは、左脳的な能力として考えられてきました。経営には企画力が必要となり、それに対する経営戦略が計画されるわけです。
加えて、販売実績やマーケティングなどのデータや、数字に隠された本質を見抜く事や分析で、結果につながる答えを導き出したりするわけです。このような既存の経営戦略のプロセスでは、実績を上げる事に役立つ方法として有効な手段でもあり、今後も必要とされる事でしょう。
ところが社会全体が同じ思考で同じ行動を取る事になれば、必ずしも左脳的な思考が有効とは言えません。この場合、社会の認識が成熟しきっていると考えられます。人々の趣味嗜好も多様化した現在において、これまでの経営方法とは異なりつつある事が認識されているのです。
つまり経営において、似たような思考と行動から導き出される結果は同じ答えしか生み出さないわけです。それでも競争社会である世の中で、競合他社と違う企画を生み出すには、違う考え方が求められるわけです。
そこで導き出されたのが、感性や直感を必要とされる右脳的な発想であり、美意識にともなうアート型経営が求められる理由となったわけです。
スティーブ・ジョブズのアート型経営
パソコンやスマートフォンに求めたのは、高い機能と性能だけではないのです。Appleユーザーの多くが求めたのは、デザイン性や感性に訴える機能だった事です。多くのユーザーの気持ちを叶える事ができたからこそ、大きな成功を手にする事ができたと言えます。
起業が美意識を求める流れ
グローバル企業の傾向として幹部候補に対して、アートスクールにて「美意識」を鍛えて実利的な思考を養わせる動きがあります。社会の変化するスピードに対応する為には、不透明な社会を切り抜く基準として、それによって判断を明確にできると述べています。
「美意識」はアートだけの観点にとどまらず、物の善悪にも通じる事です。大企業のコンプライアンス違反や役員や社員の不祥事などの問題も、根底にあるのは数値目標や言語化できる「サイエンス」では対応できなくなっていることであり、経営の苦境に立ち向かうのは「直感」や「感性」の領域からのヒントが重要になるのです。
まとめ
経営と美意識の突拍子もない組み合わせでしたが、変わりゆく経済や社会環境と対峙していく為には、今までのような論理的思考だけでは、リスクを回避する事ができないこともあるかもしれません。経営に悩みがある場合には、1つの視点として美意識について考えてみてはいかがでしょうか?