経営者にとって大きな課題は、現在の事業をどのようにして、いつ、誰に承継するかという事業承継問題です。近年は後継者不足に悩む中小企業の経営者も多く、更に深刻さを増しています。このような中、事業承継において発生する消費税について考えていきましょう。
【事業承継の種類】
事業承継には、大きくわけて生前に承継する場合と、経営者が亡くなってから承継をする場合の2種類があります。それぞれの方法で消費税の扱いが異なってきますので詳しくみてみましょう。
【生前に事業承継をする場合】
前経営者が、事業を廃業して後継者になる人が新たに事業を開業した場合をみてみましょう。
後継者が引き継ぐ事業所や店舗などは同じですが、納税義務者は全く別物ということになりますので、青色申告の申請や開業届など後継者となる人は改めて申請をし直す必要があります。
消費税の納税額は、前々年の課税売上高等によって決められますが、開業初年度は売り上げがありませんので消費税は免税されます。
また、開業2年目も、基本的には前々年の売上高がありませんので免税されます。3年目以降は、課税売上高が1千万円以下かどうかで免税か、課税かの判断がされます。
【相続によって事業承継をする場合】
経営者が亡くなり、相続によって事業を承継した場合も生前に承継した場合と同様に、青色申告の申請などは税務署で後継者が改めて行うことになります。
消費税の納税義務については、生前に承継した場合と少し異なりますので注意しましょう。
消費税の納税は、前経営者の事業を後継者がそのまま引き継いだことになるため、前経営者の前々年度の売上高を参考にして消費税額が決められることになります。
このように、生前に事業承継をした場合と経営者が亡くなり相続によって事業を承継した場合では、消費税の課税が異なりますので注意しましょう。
特に相続により事業承継を行った後継者は、売上高によってはすぐに消費税の納税義務が発生するため現金の用意をしておく必要があります。
また、先代が提出していた「課税事業者選択届出書」や「課税期間特例選択届出書」「簡易課税選択届出書
などは相続により、そのまま引き継がれるわけではありませんので、後継者が新たに提出する必要があります。
【まとめ】
事業承継と、消費税について理解できたでしょうか。生前に事業承継を行った場合と、相続によって事業承継が発生した場合では消費税の扱いが異なります。
これらを考慮し、後継者が困らないように早めに事業承継対策を取ることが大切でしょう。