被害者の治療が長引いたり、加害者との話し合いがつかない場合などで、請求手続きが完了していない場合には、損害賠償の請求権が時効し消滅する可能性がありますので注意が必要です。
【請求権の消滅】
法律で定める時効期間が過ぎると、請求権は消滅してしまいます。これを請求権の消滅時効と言います。
事件や、事故などが起きた場合賠償請求が発生しますが、被害者がいつまでも加害者に対し請求をしなかった場合や、手続きに時間がかかった場合などには請求権が消滅し損害賠償を請求できなくなる恐れがあります。
なお時効は、一方の債務者側が主張をしなければ成立しません。
交通事故の例を見てみましょう。
【交通事故の時効】
交通事故のような不法行為の時効は3年間になります。ですから、損害賠償権は3年を経過した時に時効によって消滅します。
損害賠償の請求権の起算日は、「損害および加害者を知った日」から計算されます。
また、交通事故の場合請求、差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分、承認などにより請求権を一時中断させる事が可能になります。
また、被害者の請求により加害者から賠償請求の支払いが行われた場合はそこから、進行される事になります。
加害者による保険会社への請求は、自賠責保険、任意保険ともに3年となっていますので示談交渉などを行う場合は、この期限を意識して行う必要があります。
【損害賠償の内容によって異なる時効開始】
交通事故には、大きくわけて物損事故と、人身事故の2つがあります。
それぞれに時効が開始されるタイミングが異なる為注意が必要です。
(物損事故の場合)
被害者に特に怪我はなく、車や物に対する被害だけの場合を物損事故と言います。この場合は、交通事故の発生時が時効開始となり損害賠償請求は交通事故発生日から3年となります。
(人身事故の場合)
交通事故により、人に怪我を負わせた場合は人身事故になります。人身事故の場合は、後遺障害の有無によって変わります。後遺障害が認められなかった場合は交通事故の発生日が時効の開始日になります。
万が一交通事故が原因で後遺症が残った場合は、損害賠償の請求の時効は、医師による後遺障害診断書が作成され、症状固定の日から開始される事になります。
【まとめ】
このように、損害賠償請求権が時効になるのは特別な場合を除き一般的には事故発生日より丸3年となっています。
示談交渉がなかなか進行しない場合は、被害者にとっても賠償金や慰謝料が支払われなくなる可能性も高まり不利になります。このような場合は、当事者や保険会社との交渉を一旦辞め、交渉の場を調停や訴訟に移す方がよいかもしれません。