役員の退職金 ~分離課税等で税率は抑えられるが・・・~

経営者のリスク

役員の退職金で節税ができるということはよく知られていることでしょう。しかし、正しい知識を持たずに役員退職金を会社から出すことは、大きなリスクも抱えることになりますので注意が必要です。それでは役員の退職金を出すメリットと注意点をみていきましょう。

■メリット

◎退職所得控除
支給を受けた金額からまず課税金額の前に引き算ができます。計算式は勤続年数によって変わります。

▽20年以下・・・40万円×勤続年数
▽21年超・・・・800万円+70万円×勤続年数-20年

◎1/2課税
退職所得は上記の退職所得控除を差し引いた後の残額が課税対象になるのではなく、残額に1/2を乗じた金額が課税所得となります。ただし、勤続年数5年以内の法人役員等についてはこの措置の対象外になります。

◎分離課税
分離課税とは、他の給与所得や事業所得などと合算されて課税されるわけではく、退職所得のみで課税されます。所得税率は超過累進課税(基準金額を超えた部分に対してその税率が課される)のため、所得が増えれば税率が高くなります。
累進税率でも単純に課税対象金額全体に税率を適用する「単純累進税率」がありますが、退職金では、課税対象金額をいくつかの段階に区分してそれぞれにあった税率を適用する「超過累進税率」を適用します。
所得が高い人の場合、さらに高額な金額になると予想される退職所得と他の所得を分けて課税されるのはそれだけで税率を低くすることができるのです。

■注意点

役員退職金を支給するためには次の2つのポイントを理解しておきましょう。

▽退職の事実があるか
役員退職金に関するルールは税法の通達に定めれていて、本文中には「実質的に退職したと同様の事情にあると認められること」が必要ということです。実質的ということは、仮に金融機関での個人保証を外していないことにより、金融機関からの要請により役員から外れることができない場合などは、実質的に退職したとはみなされないケースがあるということを理解しておきましょう。

▽退職金の額が不相当に高額でないか
役員退職金については、法人税法は無制限に損金の額に算入することを認めているわけではありません。退職金は業績連動給与(業績に役員の給与額を連動させる制度)に該当しないものは、原則として損金に算入できますが、不相当に高額である場合はその超過部分に対して損金の額に算入することはできません。

■まとめ

役員退職金を準備しておくために法人生命保険があります。節税・利益圧縮・事業資金の確保のほか、中途解約時の解約返戻金を役員退職金に充てることができるのが特徴です。