企業としては、あらゆる取引に際して、様々な契約を交わすことで事業を行うことができます。企業側がいかにリスクを想定していても社会環境や経済状況によって、リスクは、変化していき「賠償責任」の必要性も回避できないでしょう。リスク管理を行う為には「賠償責任を制限」について紹介していきます。
■賠償責任を制限するとは、
事業を行う上では、常に契約書が取り交わされます。販売であったり、サービスであったり、流通や業務委託であったりと事業の形態は様々です。契約において「賠償責任」の指定が、あるなしに限らず、賠償責任は発生する事になります。
また、個々の契約によって「別途損害賠償責任の規定」が定められております。「賠償責任」は契約違反の責任を負う事です。契約の実行が損なわれた時や不法行為によって賠償責任を負う事や契約の解除は大きなリスクとなります。それでは、大きなリスクを軽減するためには、どうすれば回避できるのでしょう。「賠償責任を制限」を契約書に変更する事によって可能となってきます。
◎「契約自由の原則」とは
民法では公の秩序や法の下での規律に違反しないのであれば、当事者同士の了解もって「契約の自由」を認めるという事です。
(1)締結自由の原則
当事者の意思によって契約を結ぶのは自由である。
(2)相手方自由の原則
契約の相手を決めるのは自由である。
(3)内容自由の原則
当事者同士で契約の内容を決定できる。
(4)方法自由の原則
契約は当事者の合意だけで成立するが、書面にする方法や、口頭のみでの契約も自由とある。
■契約書によるルールの修正とは
①債務者は「故意や過失」の限定を行う
契約書のルールを合意のもとに修正する事によって企業(債務者)が「故意や過失」の限定をすることができるのです。これによって、事業上での損失を最小限にまで減らす事が可能となります。賠償責任は完全に回避する事は難しいのですが、制限を契約書に盛り込む事で、企業が負うべき莫大な損失を軽減できるのです。
これは、リスク管理として絶対に不可欠なものとして認識が必要です。しかし、ルールの変更は、債務者だけに有利となるわけではありません。
◎範囲の減少をルール修正では、
賠償責任は、「故意または重過失」に限り責任を負うこと。これは、債務者に対しての有利なルールとなります。
◎範囲を広げたルール修正では、
賠償責任は、「不可抗力以外のすべて」の条件において責任を負うこと。これは、相手側に対しての有利なルールとなります。
※「重過失の責任」に対しては不当な契約として「無効となる可能性が大きい」ため、将来的なリスクを負うことになります。
②損害賠償の範囲を限定する
損害賠償には「通常損害」と「特別損害」に分けることがあります。
・「通常損害」は、一般的に考えられる契約違反に対する損害のこと。
・「特別損害」は、通常以外の「特別の事情によって生じた損害」をいう。
◎現実に生じた通常損害に限って損害賠償を行う。
実際の損害が「通常損害」と「特別損害」のどちらかに限定する事が分かりにくい為に、今後のトラブルとなるリスクがあります。ある程度発生が予想される損害を個別に規定するのが有効とみます。
③損害賠償額を定めること
損害賠償額を定めることは、契約者の双方から変更を求められることになります。損害賠償額は、その損害の大きさによって異なるので、具体的な金額は定めにくい物でしょう。実際の例としては、賠償責任の金額に対して上限を決めることが多いです。
※違約金、損害賠償額の予定は、一方的に不当に有利になる場合と、損害額の立証に役立つこともあります。
④法定利率以上の請求
「民事法定利率」は、年5%であり、「商事法定利率」では年6%の利率が決められています。契約書での特定の取り決めない場合には、法定利率を請求となります。契約の修正において「法定利率以上の利息」を求める変更をすることができますが、利息制限法の上限利率を超えてはいけません。
⑤損害賠償に請求期間を制限
契約当事者に対して契約責任を長期間の拘束が適切でないと考え期間の制限を修正することがあります。ただし、不当に短く制限する契約は、無効になることがあります。
■契約書の修正の限界があること
基本的には「契約自由の原則」があるのですが、法律の枠を超えることはできません。一定の限界によって修正が不可能な事もあります。消費者契約法による弱者の保護。公序良俗違反によるものは、一方的に有利なものや不当な請求額など。「労働基準法」や「割賦販売法・特定商取引法」「独占禁止法・下請法」などの限界があります。
契約書には賠償責任を制限する為のリスク管理が必要としましたが、契約相手の同意を求めることが難しいのですが、想定されるリスク管理には交渉の努力は必要です。