倒産件数の減少で経済指標は好況期と言われている状況ですが、人材難や資材価格が高騰するといった経営リスクも予想されており、倒産リスクとその対策について考えていく必要があるでしょう。
倒産リスクを把握するために
まず倒産リスクとして関わりの深い取引先管理に対しての課題としては、信用力が低く債権残の多い取引先には注意するということでしょう。取引の全体にどのくらいの与信リスクがあるかについて金額で把握できているでしょうか?焦付きが発生していなくても与信リスクは存在していますので、軽減する目標を立て与信リスクの変化を見直すことが必要となります。この部分が把握できなければ経営目標も予算も立てられなくなるので継続的に成長することは難しくなります。取引先が複数の支店や部署、関係会社で取引している場合には、データを整備して債権の名寄せを実施し与信総額を把握するようにしましょう。
倒産件数は減少していても…
企業の倒産は減少基調が続いていますが、その要因としてあげられるのは2009年12月~2013年3月末まで施行された中小企業金融円滑化法による効果が大きいでしょう。法律自体は終了しても金融機関での返済猶予や減額などの支援は継続している状況のため、多くの中小企業が資金ショートの回避に繋がるなど倒産が表面化しない状態になっています。ただし企業倒産は減少したものの、想定外の事態により経営破綻という状況に追い込まれる企業も後を絶たないという状況です。
想定外で経営破綻した第一中央汽船
東証1部上場企業であった第一中央汽船は前身企業から数え120年以上続いた企業で、外航不定期航路事業の中でも大手であり2008年3月期の年収入高は1,666億2,700万円という勢いでした。しかしリーマン・ショック後に受注は減少し、燃料費は高騰した上に円高が影響して経営状態は急速に悪化し、積極的な設備投資などが裏目に出て多額の赤字計上という状況に陥ってしまいました。経営再建のために筆頭株主である商船三井などから支援を得るなど様々な取り組みを実施していましたが、海運市況が急速に悪化したことでついには民事再生法を申請するという結果となったのです。
第一中央汽船に起きた想定外
再建策として検討していた同業他社とのM&Aが失敗したことがまずは想定外の事態といえるでしょう。第一中央汽船は住友金属工業と長期に取引関係があり、その住友金属工業は2012年に新日本製鐵と経営統合し新日鐵住金となりました。同じグループ内の海運会社と統合するのではと注目されていたのにもかかわらず、鉄鋼減産で輸送需要は減少し市況悪化なども重なったことで統合案は見送りとなったのです。それに加えて中国経済の減速感が強まり世界同時株安が発生しました。この2つが影響して外航不定期航路事業は市況悪化に拍車を掛けてしまい再建を断念するという結果になったと考えられます。
倒産リスクを回避するために
倒産しないように様々な取り組みを行っていたとしても、予測のつかない事態が発生する場合もあります。しかしそのリスクを最小限に抑えるためにも、取引先の管理などについては企業内で対策を講じることが必要となります。