前任の社長がオーナーとなり代わりに社長業を任されることは、ご自身にとってはこれまでの業績を評価されたからと思い安易に受け入れやすいことかと思われますが、就任時に雇われ社長のリスクについてもしっかりと把握しておかなければ、トラブルになることもあります。それでは雇われ社長のリスクとそのセキュリティ(=防衛手段)を含め今回はみていきましょう。
■訴訟リスク
オーナーと社長はやはりオーナーが上位に来ます。会社の支配権は株式で決まりますから保有率が多いほど株主総会で保有数の多いオーナーの意見が議決で通るのです。全ての決定権がない中で会社を運営していくのですから雇われ社長はリスクが高いのです。いきなり、会社を倒産させることになった場合、従業員への給与の支払いや取引先との訴訟問題などが発生することもあります。ではオーナーがそのような経営をしない為にもどれくらい株を保有していたほうがよいのでしょう。
◎会社の解散や合併など重要事項を決める特別決議は3分の2以上の賛成が必要
◎経営権の獲得、取締役・監査役の選任決議及び解任権などは2分の1以上の賛成が必要
◎重要事項の特別決議の阻止は3分の1以上の賛成が必要
◎解散請求権は10%の保有
◎会計帳簿の閲覧請求権・財産状況調査のための検査役選任請求権は3%の保有
このように株式保有割合で経営者の議決権が異なってきます。ですので、せめて会社をオーナーが勝手に会社を運営できないよう3%以上の株は保有し、会計帳簿の閲覧をおこない会社の利益向上に社長としての責任はもちたいものです。
■連帯保証人のリスク
雇われ社長にとって最も心配なのは金融機関などに対して連帯保証人になることではないでしょうか。一番のリスク回避は金融機関との金銭消費貸借契約書に署名・捺印しないことですが、雇われ社長になる際にこちら側からの条件として新規の借り入れをする際には連帯保証人にはならないことを書面に盛り込んでおくことがよいでしょう。もし、雇われ社長として連帯保証人になってしまった場合、企業の業績が悪化して返済ができなくなった場合には「経営者ガイドライン」により連帯保証人を外れることができることがあります。
◎代表取締役を解任され取締役も辞任した場合
◎株主と支配的な株数を保有していない
◎会社の業績や事業を継続する上で重要な財産や資産を個人名義で所有していない
◎会社が借入をしている同じ金融機関で多額の借金をしていない
などの条件があれば、借入をした金融機関は雇われ社長を連帯保証人から外さなくてはならないことになっていますので、上記の事項は知識として覚えておいてください。
■失業保険のリスク
雇われ社長は経営者側であるため、登記をするときに役員(代表取締役・専務取締役・常務取締役・監査役)であれば被保険者にはなれません。しかし例外として兼務役員(役員であって同時に工場長などの従業員)であれば被保険者となることができます。
また、万が一の保証として「中小企業退職金共済」という保険があります。これは事業主が中小企業退職事業本部(中退共)と契約を結び毎月の掛け金を金融機関に納付します。法人の役員であっても従業員として賃金の支給を受けているなどの実態があれば加入することができます。そのようなことから従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が支払われるというシステムとなっているので加入をお勧めします。
雇われ社長のさまざまなリスクはご理解いただけたかとおもいます。これらのことを踏まえリスクに対するセキュリティ(=防衛手段)は万全にしておきたいものです。