企業が抱える事業承継という問題を解決する方法の中に、後継者に対して事業を継承する上で持株会社を設立し、持株会社を継承する方法があります。
どのような方法なのか、内容を理解しておくと節税にも役立ちますので、しっかりと理解していきましょう。
持株会社とはどのような会社?
日本では1997年に解禁され、企業経営の新しい仕組みとなった「持株会社
は、具体的な事業活動を行いません。
その代わりに他の会社の株式を所有し、事業活動を自社の管理下に置いて実質的に支配することを目的としています。ホールディングカンパニーという呼び方を耳にしたこともあるでしょうが、このような会社が該当します。
持株会社の目的は?
持株会社は他の会社を支配することが主な業務なので、自らは製造や販売をせず純粋に持株会社として存在します。
他にも、銀行や証券会社などの金融機関を支配することを目的とする金融持株会社や、自分たちも事業を行いながら企業の株式を保有する事業持株会社など、全部で3種類あります。
持株会社を設立すると株式の引継ぎがスムーズに
持株会社が存在しない場合には、オーナーが複数の会社を所有していると後継者に対する事業継承の際に、会社ごとに株式の引継ぎを行う必要が出てきます。そうなると手続きが複雑になるので時間や手間が掛かるでしょう。
さらに会社ごとに意見が食い違う可能性もあるので、足並みがそろわず事業継承が進まない状況に陥ることも予測されます。
このような問題も、持株会社を設立することによって会社ごとの株式の引継ぎの手間を省くことが可能です。後継者が出資して新会社を設立し、その後、オーナーから事業継承する会社の株式を買い取って持株会社にする流れを組めば、事業継承は円滑に進むようになるでしょう。
さらに節税効果も期待できる!
また、事業継承に持株会社を利用することで、相続税の節税効果も期待できます。
持株会社を設立する以前は、オーナーがそれぞれの会社の株を個人で直接保有している状態です。しかし持株会社を設立すると、持株会社を通して間接的に保有することになります。
オーナーの財産の内容が変化する上に、持株会社の保有する株式評価額は株式移転後の値上がり益の42%を控除した評価となります。会社の業績が上がった場合でも、株価の値上がりを抑制することに繋がるというわけです。
会社の業績が長期間に渡り上がり続けるといった条件は付くものの、下がらなければ控除額が大きいので相続税の節税に大きく役立つと言えるでしょう。
後継者が複数いる場合は注意が必要!
ただし後継者が複数いる場合には、持株会社が存在することで特定後継者に事業承継されることになり、グループ全社の支配権や経営権を巡った紛争が起こる可能性もあります。
さらにこの方法は現オーナーと一代限りの対策のため、相続税対策は後継者の次の後継者の時に再度検討が必要です。
持株会社を事業承継に活用する方法は、あくまでも後継者が複数ではなく一人の場合にメリットが高い方法です。
後継者が複数いる場合には紛争が起きる可能性があるので、専門家に相談した上で十分検討し、実施することをオススメします。