経営を承継する場合、相続と生前に承継する方法があります。これら2つの承継について、棚卸資産や消費税の扱いはどのように異なるのか確認しておきましょう。
相続による事業承継の場合は?
相続は人が亡くなり、配偶者や子など親族が故人の財産上の権利や義務を承継することですが、資産だけでなく負債も包括的に継承し、さらに納税義務まで継承します。
相続があった年の基準期間と前々年において、故人の課税売上高が1千万円を超える場合には、相続があった年の相続人の納税義務は免除されません。
相続で取得した資産については、故人の取得価額、取得日、耐用年数、未償却残高を引継いだ状態で償却費の計算を行いますが、償却方法までは引継がず、仮に故人が定率法を使用していて同じ償却方法にするなら届出書の提出が必要です。
生前に承継する場合は消費税が課税される?
例えば生計を一にする親から子に対して、生前に事業承継を行う場合には、親が廃業して子が開業する形で行います。この場合、事業用資産をどのように承継させるのかを考える必要があります。
事業用資産と事業用負債を同時に承継することになりますが、差額が110万円を超えれば贈与税が発生します。
例えば古い機械設備などなら110万円の範囲で収まる場合でも、工場や店舗といった土地や建物は明らかに高額になることが予想されるでしょう。
・土地や建物については使用賃借を用いる方法がある
土地や建物は名義を移すのではなく、無償で賃借するという使用賃借などが方法として考えられます。
子の名義でなくても、事業に使用していることで事業所得の計算上、減価償却費も計上できますし、固定資産税や火災保険料なども経費としてあげることができます。
・使用賃借で消費税は課税されるのか
事業として対価を得て行われる資産の譲渡や資産の貸付および役務の提供において、事業者が行う資産の譲渡は消費税の課税対象です。そのため無償による資産の譲渡や貸付、役務の提供は資産の譲渡には該当しないと言えるでしょう。
ただし消費税の課税対象となる場合に注意
ただし、故人事業主が棚卸資産や棚卸資産以外の資産で事業用に供していたものを、家事のために消費や使用したという場合は、事業として対価を得て行った資産譲渡とみなされます。そのため消費税課税対象となる点に注意しましょう。
また、親が事業用の機械をローンで購入した場合で、子がそのローンを引継いでい払う場合でも、負担月贈与による資産の譲渡に該当するため消費税の課税対象です。