勤務中の労働者の事故は届出が必要
労働災害で労働者が休業もしくは亡くなった場合には、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署長に届け出る必要があります。労働者が事業場、敷地内、事業場に付属した建築物内で負傷し、休業・死亡した際にはそれが勤務中の負傷でなくても提出する必要があります。
労働者死傷病報告の届出が不要なケース
勤務中に起きた災害でも負傷を負ったのが社長であるなど労働者外の場合、もしくは被災労働者が休まず勤務していた場合(不休災害)には提出する必要がありません。また通勤災害は労災保険の対象ですが勤務中の災害でないので届出は不要です。ただし負傷者が労働保険の特別加入者の場合には、労災保険の補償を受けるために労災保険用の事故報告を行う必要が発生する場合がありますので注意しましょう。
休業日数の数え方
労働者死傷病報告での休業日数は、負傷日の翌日が起点となり暦日数で数えます。例えば勤務中にケガをした労働者がそのまますぐ医療機関で治療を受け、そのまま帰宅した場合で翌日以降 1日も欠勤しなかったのであれば不休災害になります。労災保険での休業日数は、負傷した時間が所定労働時間内なのか残業など所定労働時間外かによって異なります。負傷した日の所定労働時間の一部でも休業すれば負傷当日が起点となり暦日数で休業日数を数えます。そのため残業中に負傷した場合には、負傷日の翌日が起点となり数えることになります。
労災保険の請求とは別に届出が必要
労災保険を請求するために労働基準監督署に書類を提出しているから、労働者死傷病報告の届出は不要ではありません。労災保険の請求の有無にかかわらず届出は必要です。仮に勤務中の事故で労働者が休業しているのに、わざと届出しなかった場合や嘘の内容で届出を行った場合には「労災かくし」と判断され労働安全衛生法違反により50万円以下の罰金に処せられることがあります。
「労災かくし」とは
労働者死傷病報告をわざと提出しない行為や虚偽の内容での提出は「労災かくし」という犯罪行為になります。労災事故があったことを隠そうとする企業は、被災した労働者へ直接治療費や休業補償を支払って口止めします。本来であれば元請や発注者にも必要になる報告、労働基準監督署へ届出、労災保険の請求は行いません。この労災かくしを行う理由は様々ですが、労働基準監督署をはじめ、元請や発注者に労災事故を報告したくないことが一番の動機となるでしょう。
労災事故の際には正しい報告を
労災かくしは結局すぐに発覚することになります。労災保険の請求人は被災労働者ですので、例え企業が労災請求を認めないと主張したところで被災した労働者の請求が認定されれば労災保険は給付されます。また、労災かくしを行う企業から労働者には最初は手厚く補償が行われても、だんだんと疎かになってくることで被災労働者から労働基準監督署へ相談されることで発覚するケースもあります。労災事故が起きた場合には正しい報告を行うようにしましょう。