処罰を求めるために必要な意思表示
テレビのニュースやドラマ、新聞など「告訴」という言葉を耳にすることがあるでしょう。聞きなれた言葉でも、説明することは難しく「告発」や「被害届」と混同してしまう場合もあるかもしれません。経営をしていると告訴に関係する可能性は0ではありませんので、それぞれ言葉の意味を理解しておきましょう。
「告訴」とは
犯罪被害者もしくは告訴権者が、捜査機関に犯罪事実を申告して処罰を求めることを告訴といいます。その際に提出するのが「告訴状」です。告訴は検察官や司法警察員に対して行いますが、口頭でも可能なものの一般的には告訴状を提出します。受理してもらうことで告訴が成立します。例えば従業員が業務上横領をした場合など、告訴して処罰を求めなければ単なる被害届として扱われます。被害届は捜査機関に犯罪の被害を報告するものであり、処罰を求める意思表示は含まれていません。一定の犯罪は告訴がないと訴追(裁判に訴えて処罰を求めること)はできないことになっています。
告訴ができる人を告訴権者といいますが、主に次の人たちを指します。
・被害者
・被害者の法定代理人
・被害者が亡くなっている場合にはその配偶者や直系の親族など
「告発」とは
似た言葉に告発というものがありますが、これは犯人以外の第三者が犯罪事実を申告し処罰を求めるものです。どちらも捜査機関に犯罪事実を申告することと、犯人の処罰を求める意思表示であることは同じですがそもそもの主体に違いがあります。告訴は被害者やその法定代理人などの告訴権者が主体で、告発は告発権者や犯人以外の第三者が主体です。
注意したいのは「親告罪」
親告罪は告訴がない限りは公訴を提起することができません。捜査が終了した場合、検察官はその事件について裁判所の審判を求めるかを決定します。裁判所の審判を求める意思表示が公訴で、起訴状を提出して始める一連の手続を公訴の提起(もしくは起訴)といいます。
法人も告訴することは可能か
告訴の主体は個人だけではありません。被害を受けたのであれば法人でも自ら告訴人となることが可能です。法人や団体が告訴人の場合はその代表者が告訴を行うことになりますが、代表者が任期満了した後も従前の代表者が引き続き行うことができます。
告訴状は受理されにくい?
告訴すれば「告訴状」は受理してもらえるかというとそうではありません。全ての告訴状を受理していれば、それら全ての被害について徹底的に捜査して起訴するかまで判断しなければならないからです。告訴状は一旦受理されれば、起訴するのかしないのかまで捜査する必要性があります。そのため限られた人員の中で捜査する必要性があるのかを見極めて受理するかどうか決定されます。事件の構成成要件を満たしているかも重要になりますので、告訴状を作成する際には専門家に相談することが望ましいでしょう。