法令遵守等の徹底とは?労災事故で賠償責任を負わないために

企業経営情報

国や団体で定められたガイドラインを守ることは元請企業としての責任を果たすためにとても大切なことです。仮に労災事故が発生すれば、元請企業は責任の矢おもてに立つことになります。法令遵守や安全管理を意識することはとても大切なことと言えるでしょう。

 

 

減らない労災事故への対処として

 労災事故が減らないことを懸念して、国や建災防、各団体などで労災防止への対策は特に力が入れられています。特に、建設業法、労働基準法、労働安全衛生法などの「法令遵守」、メンタルヘルスの実施や事故防止システムの導入など安全衛生管理体制の整備と確立、末端業者まで徹底した安全教育などを重要視しています。

労働基準法での位置づけは使用人

元請企業は全ての下請に対して指揮、監督、管理を行う責任と、災害補償を行う義務があります。そのため下請を労災から守るための安全配慮義務が発生します。建設業は全業種の中でも特に死亡事故の発生率が高い業種です。

労災訴訟が起きた場合

 仮に死亡原因が過酷な労働条件によるものだとしたら、遺族が対応に不満を抱いた場合に怒りや不安を買って労災訴訟に発展することもあるかもしれません。死亡事故や後遺傷害といった重大事故による労災訴訟が起きた場合には、訴訟額は数千万円、さらには億単位と莫大な金額に膨れあがる場合もあります。そのような巨額な損害賠償請求に対して、賠償責任を負うことになった時にはたして企業は耐えられるでしょうか。労災特別加入をしていない一人親方が現場で死亡した場合、政府労災から受け取るものは何もありませんので遺族から損害賠償請求されれば訴訟によって判決額を負担することにもなり兼ねません。

責任は元請企業まで

 そして亡くなった人と直接雇用関係がある下請会社だけでなく、元請企業にも責任が追求されることも忘れてはいけません。損害賠償請求についての訴訟が起きた場合には、労災保険で逸失利益を全て補填することは難しいでしょう。慰謝料が発生した場合、労災保険に慰謝料は含まれていませんのでそのまま支払わなければならなくなります。このような万が一訴訟が発生した際の費用についても、労災事故の危険性が高い業種なだけに事前に備えておく必要があります。

徹底した法令遵守などを心がけることが必要

 労災訴訟は高額化している傾向にあり、仮に元請企業に悪質性が認められた場合には刑事罰が科せられる場合もあります。国や各団体などのガイドラインに則って、法令遵守や安全衛生管理体制の整備と確立、末端の下請業者にも安全教育を徹底することが大切です。また、民間の保険会社では労災の上乗せ保険として、使用者賠償責任保険などを提供していますので労災だけで足らない状況が予測される場合は検討してみると良いでしょう。