経営者は役員退職金の金額を決める際に、税務リスクなども踏まえて考えておく必要があります。極端に高い退職金を支給した場合、法人税法上の経費(損金)として認められない可能性があります。
役員退職金の金額の決定方法
法人税法上、不相当に高額な役員退職金に対して損金算入が認められておらず、合理的な金額であれば損金として認められます。
役員在任期間の功績に対する報酬である退職金は、その金額が合理的なものでなくてはいけません。一般的に役員退職金は、在任期間や役員報酬額、功績などを考慮した上で決定されます。
役員退職金の計算方法
法人税法で役員退職金の計算方法については具体的に示されていません。合理的な決め方として、功績倍率等を考慮して計算する方法があります。
・功績倍率とは
役員任期中に会社へ貢献した度合いを一定の倍率にしたものが功績倍率です。倍率は定めがあるわけではありません。その人の功績によって左右されます。
従事期間や退職理由、同業種や同規模法人の退職金など照合した結果、金額が不相当に高額だと判断された場合には損金不算入になりますので、同業種や同規模の他社が使用する金額なども参考にすることが必要となります。
・損金不算入と判断されると
高額だと判断されて損金不算入になった役員退職金分には法人税が課せられることになり、既に退職金として支給していることで退職者には退職所得に対する所得税が課せられます。
そのため損金不算入になった金額については、法人税と所得税が二重で課税されてしまうことになります。
・最終功績倍率法で算出した退職金
最終功績倍率法では
「最終役員報酬月額×役員在任期間×功績倍率
により退職金を算出することができます。
この金額と、同業種・同規模の他社の統計データなどを照らし合わせ、否認されてしまうリスクを判断しましょう。
・役員報酬が0円の場合
最終役員報酬額が0円の場合、もしくは最終的に非常勤などで役員報酬が極端に低いという場合も、それまで会社に貢献したことで役員退職金を支給するというケースもあるでしょう。
この場合は、功績倍率を考慮した計算方法を使うと退職金の金額が0円もしくはかなりの低額になるため、同業種や同規模の法人の退職金額の平均などを参考に決定していくようにします。
退職金によるメリット
退職金に係る所得税は、これまでの功労への対価の後払いという性質や退職後の生活資金という性質から税金面で優遇されています。
退職金に対しては所得控除が設けられており、退職所得控除後の金額の半分のみが課税所得金額になります。また、他の所得とは別で所得税率が計算されます。
税務上優遇されてからと退職金をむやみに増やすのではなく、税務リスクも考慮することが重要です。
金額が大きくなることで、自社株の株価評価にも大きく影響させることができますし節税効果もありますが、未払い計上して損金算入する場合には税務リスクがないか注意しましょう。