経営者の役割とは?名前だけの取締役は通用する?

企業経営情報

同族会社や閉鎖会社など、実際に業務には関与しないけれど取締役を語る名目的取締役が存在します。名目上の経営者などもこれに該当するでしょう。

事実、中小企業の経営者の中にも、取締役は名前だけだからと言われて就任するケースや、就任を依頼した、された、という経験があるという人もいるかもしれません。
しかしもし会社にトラブルが発生してその責任追及が取締役に及んだ場合には、そのような名目上の取締役はについては、名前だけだったから責任を軽くしてもらいたいという事情は通るのでしょうか。

名目上の取締役なら責任は軽い?
取締役は、株式総会で選任された者であればなれるため、業務実態については問われません。そのため名目だけの取締役であることで責任を軽くできるという法律はないと言えます。
例えば過去の判例の中にも、社外重役として非常勤取締役に就任した者が社長としての業務執行を監視せず、取締役会の招集も求めることもなく、すっかり社長に経営を任せていた状況の中、社長が支払い見込みのない商品を買い入れ売主に損害を与えた事例で、売主への損害賠償責任を認めたという例があります。

報酬を受けていなければ責任は緩和される?
過去の判例の中には、取締役が報酬を受けていないを理由に通常の取締役よりも責任を緩和したという例もあります。ただ、そのような判例については会社法制定より前のもので、株式会社に取締役を3人以上設置することが義務だった時期のものです。
会社法によって取締役は1名で良いことになりましたので、名目のみの取締役についての判断は厳しくなる可能性が高いと考えられるでしょう。

名前だけだから…では責任を逃れられない
名目上の取締役で就任することを合意したとしても、取締役としての義務を負うことに変わりありません。特に名前だけの経営者になれば、知らない間に重い責任を追及される可能性もあります。
経営者とは何なのか、どのような役割があるのかを今一度考え、取締役として義務を果たすことができないのでれば報酬は受け取らない、もしくは辞任することを検討する必要があるかもしれません。

事実上の取締役のケース
中小企業で取締役として選任されていないのに会社の業務を執行している人が第三者に対する責任を認めたという判例もあります。
このような例の場合、取締役に就任していない不実の就任登記を行う行為に積極的に関与したこと、そして事実上取締役として会社を主宰していたということの2種類のパターンがあります。
事実上の取締役としても責任が追及されることもありますので、しっかりと役割について考える必要があります。