中小企業の場合、役員への報酬や賞与を増減させることで会社の利益を調整することが比較的容易にできます。そのため法人税法上はこれら役員報酬や賞与の損金算入には制限が設けられています。
損金算入できなければ、納税額に影響しますのでどのような場合に損金されないのかなどを理解しておくことが必要です。
配偶者が経営に携わっている場合には注意が必要
同族会社の場合、経営者である社長の配偶者が色々と経営に関わることが多くみられます。役員となっている場合や、役員ではないけれど経営方針の策定や資金計画の決定などは配偶者がこなすという場合もあるようです。配偶者が会社経営に携わっている場合、支払う給与の税務には十分注意しましょう。
役員として登記していないのに役員とみなされる?
従業員の給与は法人税法上では原則として損金扱いです。配偶者が登記上は役員ではない場合には、給与を支払って損金算入させたいと思うかもしれません。
しかし役員として登記していない場合でも法人税法上は役員とみなされる可能性がありますので注意が必要です。
法人税法上の役員の範囲に注意
会社法やその他法令での役員とは、代表取締役、専務取締役、常務取締役、監査役、執行役、会計参与、理事、監事などのことを
します。
しかし法人税法上の役員の場合には、役員とみなされる範囲は広くなっています。使用人以外で実質的は経営に従事している人や、同族会社の使用人で一定要件を全て満たし経営に従事している人なども役員に含まれます。
・一定要件とは?
同族会社の使用人で全ての一定要件を満たす場合は役員とみなされますが、実質的に経営に従事しており同族判定の基礎である株主グループに属していること、所属する株主グループの10%を超える持ち株割合であること、該当する使用人の持ち株割合が5%超であることなどが一定要件となっています。
登記されておらず会社の株式は保有していない場合でも、法人税法上では役員になる可能性があると考えられます。
役員への報酬や賞与が損金算入される要件とは?
役員への報酬や賞与は、従来利益の処分に該当するという考え方がされていました。そのため役員報酬は支給した金額の中で不相当に高額な金額については損金算入ができず、役員賞与は全額損金不算入という扱いでした。
しかし現行制度では、役員報酬と役員賞与は役員給与に統一されて、一定要件を満たすもの以外は損金不算入として扱われることになっています。
損金算入を可能とする要件として、次のいずれかに該当することが必要です。
・支給時期が1月以下の一定期間ごとであり、事業年度の各支給時期においての支給額が同額である定期同額給与であること
・株主総会等の決議から1か月を経過するまでに事前確定届出を提出していること
・利益に対する取り決めが有価証券報告書に記載されている利益連動給与であること
のいずれかになります。
損金算入により税金を軽減するために
役員の報酬や賞与が損金に算入されるとされないでは、納税額に大きく影響します。
しかし中小企業の場合は、利益連動給与を利用するのは困難だと考えられますので、定期同額給与か事前確定届出給与であることが必要だと言えます。