引責辞任とは?退職金の支払いや退職慰労金の請求権利の発生時期を解説

経営者のリスク

会社役員などの「引責辞任」とは、自らが責任を引き受けることにより、それまで就いていた任務から立ち去ることです。

具体的な例として、政治家の不祥事が発覚したケースでの辞職などが該当しますが、会社経営者でも引責辞任を選択するケースはあります。

ただし引責辞任では、退職金を受け取ることができない可能性も高いため、慎重な判断が必要です。

そこで、引責辞任について、退職金の支払いや退職慰労金の請求権利の発生時期を解説します。

 

引責辞任とは

「引責辞任」とは、自らが責任を引き受けて、就いていた任務を辞めることです。

たとえば、不祥事が発覚した会社の経営者などが、責任を取る形で引責辞任するケースなどが該当します。

また、役員の業務上のミスに対する責任として、辞める場合も引責辞任に含まれます。

これは、問題のある役員には退職金を支払うべきではないと考えられているからです。

 

引責辞任した場合の退職金の支払い

引責辞任した役員に退職金を支払うかについては、会社の定款の定めや株主総会の決議により判断は異なります。

業務上のミスが原因で役員が引責辞任したケースにおいては、問題のある役員に退職金の支払いは妥当か考えたとき、株主総会の決議を得ることは難しくなるでしょう。

退職慰労金請求権についても、原則、株主総会で支給に関する決議がされるまでは抽象的な権利にとどまります。

役員が役割を変えることで降格したケースなどは、実質退職とみなし、報酬が5割以上減額していればみなし退職金が支払われます。

 

退職慰労金の請求権利の発生時期

退職慰労金の支給については、定款で定めがない場合、株主総会の承認決議が必要になります。

退職慰労金請求権は原則、退職慰労金の支給が株主総会で決議されるまで抽象的な権利となるため、請求はできません。

その理由は、退職慰労金は恩恵的な性格を有するお金であり、労働者の退職金と異なる性格と解釈されているからです。

常に解任の可能性がある取締役は、在任中の報酬で評価されることが本来的であるともいえます。

株主権を行使し、会社を運営する株主が一人の場合、その株主によって退職金の決定がされたときには株主総会の決議がなくても退職金の請求を認めた例もあるようです。

明確に退職慰労金の支払いを約束した場合や、退職慰労金の支給後の返還請求に関しては、株主全体の同意があると言えないときでも支払い等の請求が認められる場合があるとされているため、ケースバイケースの対応となるでしょう。