M&A(合併・買収)における会社役員の役割は、かつてほど重くないといえます。
元々、経営戦略の一手法だったM&Aは、企業の持続可能性を左右する経営課題へと変わりました。
ただし、コーポレートガバナンス・コード改訂や事業承継問題が深刻化したことで、企業役員の役割や責任は従来ほど重くなりました。
そこで、M&Aにおける会社役員の役割について、課題や注意点を解説します。
M&Aとは
M&Aとは、合併と買収を意味する言葉「Mergers and Acquisitions」の頭文字の略称で、複数の企業が合わさり一社になることや、他の企業の株式や事業を買い取ることです。
従来までは、大企業の企業拡大戦略として行われていましたが、現在では後継者不足に悩む中小企業の事業承継や、スタートアップの出口戦略に選択される経営手法になりました。
M&Aにおける会社役員の役割
M&Aでは、巨額の資金が移動し、組織変革なども伴います。
そのため、会社の取締役などの役員には、高度な善管注意義務が課されます。
他の企業を買収する側の役員は、以下の役割を担います。
・買収価格の妥当性を検証する
・対象企業の将来の収益や自社とのシナジー効果を検証する
・上記2つに関して専門家の意見を参考に慎重かつ合理的な意思決定を行う
企業を売却する側の役員は、以下の責任を担います。
・株主価値の最大化を目指す
・売却先や売却条件の精査をする
M&Aにおける企業役員の課題
日本では、現経営者の高齢化が進み、後継者不足で親族内承継が進まず、廃業するしかない状況に陥るケースもめずらしくありません。
そのため、ノウハウや技術を途絶えさせないためにも、第三者へのM&Aも急増しています。
しかし、M&Aにおいては、従業員の雇用や取引先との関係を維持するための出口戦略として検討することが求められます。
M&Aが成立した後じゃ、一定期間、旧役員が顧問として残り、円滑に統合プロセスを支援することが必要です。
M&Aの成否を決定づける要素
M&Aの成否は、契約締結後の統合プロセスが大きく関係します。
現在では、役員が直接PMIを指揮するケースが多いといえます。
異なる企業文化を統合し、両社のIT基盤やデータ統合をスムーズに迅速に行い、業務効率化を実現することがシナジー創出に欠かせません。
M&Aの注意点
M&Aにおいては、インサイダー取引に注意しましょう。
極めて秘匿性の高い契約といえるM&Aは、役員本人だけでなく、関係者から情報が漏洩することを防がなければなりません。
そのため、厳格に情報等を管理するガバナンス体制を構築することが必要です。
また、買収の対象となる企業の環境対応や人権問題などの精査を怠れば、将来、巨額の損失を負うリスクになる恐れもあるため注意してください。


