会社経営において、従業員の健康診断は会社の義務です。
法人や個人事業主の別を問わず、従業員には年に1度、健康診断を受けさせることが法律で義務付けられています。
従業員の健康診断でかかった費用について、会計処理上の勘定科目は福利厚生費が原則となります。
ただし個人事業主は、事業主本人や青色事業専従者である家族の健康診断の費用を経費計上することはできないため注意してください。
そこで、会社に義務付けられている従業員の健康診断について、使用する勘定科目と注意点を解説していきます。
従業員の健康診断は会社の義務
従業員に対し、年1度健康診断を受けさせることは、会社の義務です。
健康診断は、一般の従業員の受ける「一般健康診断」と、高気圧業務や放射線業務などリスクの高い業務を担当する従業員が受ける「特殊健康診断」があります。
「一般健康診断」が健康診断と呼ばれており、対象者は以下の基準を満たす方です。
・常時使用する労働者
・1年以上使用する予定の労働者
・週の労働時間が正社員の4分の3以上の労働者
上記に該当する場合には、正社員だけでなく契約社員やパート・アルバイトも対象となり、役員・社長も含まれます。
健康診断にかかる費用は、会社が払わなくてはならないわけではありません。
ただし福利厚生を充実させる目的などで、多くの会社が自主的に負担しています。
健康診断の勘定科目と注意点
従業員の健康診断にかかる費用を負担した場合、用いる勘定科目は「福利厚生費」です。
なお、従業員の健康診断の費用を福利厚生費で経費計上するためには、つぎの要件を満たすことが必要です。
・従業員全員が対象である(一定の年齢制限は可)
・常識の範囲内の費用である
そのため以下のケースでは、給与や役員報酬として所得税が課税されます。
・役員のみが対象の健康診断の費用である
・役員のみを対象にした人間ドックの費用である
・宿泊付きなど常識範囲を超える高額な人間ドックの費用である
人間ドックであれば給与扱いになるのではなく、従業員で希望する方全員が受けることができ、常識の範囲内での費用なら福利厚生費として処理できます。
また、従業員の給与扱いとなる場合には損金として算入できるのに対し、役員報酬として扱う際には損金不算入となる点は理解しておきましょう。
また、事業主本人だけでなく従業員として働く家族が健康診断を受けたときの費用についても、経費計上はできません。