経営者からしてみれば、労働基準法というものはモノゴトを縛るものという認識を持っている方もいるはずだ。どんなイメージがあれど、経営者は労働基準法を知っていなければ経営を成り立たせることはできない。今回は、経営者が理解しておく労働基準法を見ていく。
■自由ではないものが労働基準法なのか
本来であれば、契約をすることは対等なものであるべきだ。だが、我々の労働ワールドでは労働者側に有利に働かせ、「労働者の解雇」がうまく機能できない法制となっている部分は確かにある。
労働環境の中でさえも、「家族的な意識が高い」からであるのではないかと思わずにはいられない。それが良いのか悪いのかといえば、経営者からすれば荷の重い話しである。だからといって、経営者が守らなくていいわけでもない。
そもそも経営者にも高圧的な態度をする人もいる。経営者の人間性の問題だけで、「クビ」にされてしまわれたら、たまったものではないはずだ。その時に、法律を武器に立ち向かえるものが労働基準法なのである。
従業員を雇っている以上「労働基準法」を理解しておかなければ、経営のリスクになっていくということだ。もっといえば、労働基準法の精神を理解している会社であれば、競争力の高い人材=「他の企業と対抗できる良い人材」が集まるということもできる。
■労働基準法のルール
以上のように、独りよがりの経営をしないためにも経営者であれば、労働基準法のルールを最低限知っておかなければならない。
◎解雇(第20条の規定)
原則として、労働者を解雇する場合に30日前に予告しなければいけない。条文には記載されてはいないが、いったいわないのトラブルを未然に防ぐためには必要なことである。
解雇を言い渡してから30日間働いてもらうことは可能だが、解雇を言い渡された本人にとっては辛いはずである。そのため即時解雇も可能で、その場合は「30日分の平均賃金」を即時支払うことが求められる。
◎賠償予定の禁止(第16条の規定)
たちの悪いブラック企業に多いのが、「罰金」を設定する行為である。例えば、遅刻をしたら罰金「2千円」を取るといった決め方は、労働基準法違反である。これが許されるところは日本には存在しない。
◎休憩(第34条の規定)
労働時間8時間を超える場合であれば、最低1時間の休憩が必要である。経営者であれば、忙しいこともあるため休憩時間を取らないこともあるのだが、経営者に気を遣ってお昼休憩ができないような職場は問題である。
もし労働基準監督署に申告された場合、指導を受けたり休憩時間の賃金の支払いを命じられることがあるため、「任意にやっている」といった場合にも注意が必要であるのだ。
◎年次有給休暇(第39条の規定)
有給休暇を気軽に取ることができる会社は恵まれている。主に日本の労働者は有給休暇を、取らずに働きすぎてしまう傾向があり、ほぼ使用したことがない方もいるほどだ。
経営者にしてみれば、ぎりぎりの人数で回している会社を休まれたら困るものだ。だからといって、有給休暇を与えなくてもいいというわけではない。日頃から有給休暇を取りやすい職場にしていく方が、健全な職場環境ではないだろうか。
◎産休関係(第65条と第66条の規定)
労働基準法ではないのだが、産前産後の関係は「育児介護休業法」に、育児休業が規定されている。
妊産婦の希望により最大6週間前から、休業をすることが可能である。産後であれば8週間の就業禁止というルールがあるのだが、実際は産後休業終了後に「育児休業」に入ることになる。
現在は育児休業も普通になったのだが、昔であれば妊娠後には会社を辞めることが当然の時代があった。しかし、現在は育児休業であっても会社の負担がほとんどないということが、育児休暇を取りやすくしているのだ。
このように経営者は、日本の労働の現状を理解(労働基準法を理解)し、自分だけでは経営ができないということを認識していかなければ、経営で得られるものはないのではないか。
法律を無視していくことはリスクであるし、良い人材は会社に貢献しつつ労働基準法で守られることが当たり前でなければいけない。