労働問題事例集からみえる日本の労務トラブルの実態!

経営者のリスク

厚生労働省の調査によると、平成24年度の労務トラブルは年間約107万件にものぼり、近年の労働問題の深刻さが伺えます。
さらに統計によると、いじめや、いやがらせの労働相談が、解雇や労働条件の引き下げを上回っており、紛争内容はさらに多様化している事がわかります。実際にどのような労働トラブルがあるのかみてみましょう。

 

【退職に関するトラブル】
契約社員として働くAさんは、本社の人事部から会社の業績不振と、本人の業務成績を理由に更新はせずに、今年度の契約で終了する事を突然に告げられました。しかし、後日退職の理由が以前、転勤命令を断った事だと知り、納得いかないと申し出ました。
転勤を断った理由は、親の介護だった事、その時は了承してもらえたのに今になってそれを持ち出し退職させられるのはおかしいと思ったからです。
今回のケースでは、Aさんは自身の業績不振と会社の業績不振なら仕方ないと同意したのですが、本当の理由は別のところにあったのなら、同意をしなかったはずです。
このような場合、Aさんは誤った認識のまま同意させられたのですから会社に非があることは明らかです。よって、退職の同意は撤回できますので、本人が本社人事部あてにそのような文書を送りました。
後に、Aさんは会社側から謝罪と1年間の更新をしてもらえるようになりました。

 

【残業に関するトラブル】
人材派遣会社の課長として働くBさんは毎月の残業時間が80~100時間もありました。終電に遅れ、タクシーで深夜に帰宅することも多くあり、体力的にも精神的にも限界を感じていました。
会社からは、管理監督者になるため残業代は支払われないと言われ、このままでは体を壊してしまうと思い退職をすることにしました。今までの未払い残業代は200万円以上になり、Bさんは少しでも支払ってもらいたいと希望しています。
労働基準法では管理監督者には残業代を支払わなくてもよい事になっています。しかし、Bさんには出退勤についての管理監督者としての裁量や仕事内容をみても自分の意志で決められるものは少なく、管理監督者には該当しないという結論にいたりました。
そして、残業を証明する書類としてタクシー代の申請書が残っていましたし、そこには「深夜帰宅のため」と記載があり上司の決裁印も押してありましたので、これを証明書として会社に提出しました。
これによって、Bさんは全額まではいきませんでしたが思っていた金額で会社側と決着がつき未払いの残業代を支払ってもらう事ができました。

 

【まとめ】
従業員一人ひとりの個性や働き方も多様になってきた現代では、労務トラブルは避けては通れないものとなりました。この様なトラブルに遭遇した時は、一人で抱え込まず、早めに弁護士などに相談をする様にしましょう。