事例で見る雇われ社長のリスクの洗い出し

経営者のリスク

小規模な会社でしたらオーナーが社長を兼任するオーナー社長が多いことでしょう。しかし会社が大きくなるにしたがい事業を展開していくなかで、オーナーとは別に会社を代表して業務を執行していく社長職、つまり【雇われ社長】のポストが準備されることもあります。

その時、オーナーからこれまでの仕事での実績を見込まれて、社長としての話しを持ち掛けられたと、すんなりと受け入れていいものなのでしょうか。今回は【雇われ社長】のリスクを洗い出していきたいとおもいます。

■事例①~報酬~

お金の話しはなかなか切り出せないところがありますが、雇われ社長に就任する前にオーナーと事前に報酬について口約束ではなく、書面にておこなわないと後々トラブルになることがあります。

就任当初は役員報酬として高い金額をもらってなくても、業績を上げるために日々早朝から出社し残業を続け頑張って成果を上げたとしても、オーナーから「では昇給しようか」となるわけではありません。

定時株主総会で認められないと昇給はできないのです。つまりオーナーが一人株主だと心一つで報酬が決まってしまうというリスクが伴ってきます。そのようなことから昇給・減給の基準を予め設定しておく必要があります。

■事例②~退職金~

雇われ社長はオーナーから役員を委託された関係であって雇用間ではありません。ですので「クビ」を宣告されても解雇ではなく解任という形になります。

役員の退職金は会社と役員の間で退職慰労金を支払うという取り決めがある場合のみ支払われることになっています。役員に対する退職金の規定がなく、株主総会で議事録が残っていなかった場合などは役員に退職金は支給されないのです。

こちらの事例も予め株主総会で退職金を決めるか、定款で定めておく必要性があります。

■事例③~連帯保証人~

雇われ社長でも「社長」という地位にいると事業を回していくために、会社が金融機関との取引をする際に連帯保証人になることもあります。またはリースをする時などにも連帯保証人として代表者として貴方の名前が求められることもあります。

もし、連帯保証人になっていた場合、たとえ会社を辞めることになったとして金融機関へ交代の申し入れをしてそれを承認してくれない時は、連帯保証人を外れることができません。

■事例④~雇用保険

先ほども記載したように雇われ社長は役員として委託された関係なので、従業員としてみなされません。役員として登記されている以上、兼務役員として職業安定所で認められた場合を除き、雇用保険には加入する事ができないのです。

事業が悪化し会社が倒産してしまった場合など、従業員は雇用保険に一定期間守られますが、役員はそれに対して事前に備えなければなりません。その備えとして「中小企業退職金共済」というものがありそれに加入しておくことをおすすめします。

■まとめ

社長というポジションにおいて、会社を運営し業績をあげていくことが重要になり、その責任は重くのしかかってきますが、オーナーとの関係性を一つ間違えれば即辞任ということもありうる雇われ社長は、とてもリスクの高い役職といえます。オーナーから社長へとの話しがきたときはリスクを想定し慎重に話しを進めていくことを考えましょう。