雇われ社長とは、株式会社の株の多数をオーナーであるA氏が保有し、会社の舵取り役として別の人物を代表取締役社長として就任させたり、企業が新事業を立ち上げるために子会社の代表取締役を別に設けたりすることをいいますが、雇われ社長は経営を行う立場のサラリーマンに過ぎません。そのような雇われ社長のリスク的な要素を今回は見ていきましょう。
■万が一事業が失敗した時の責任
法務局に会社設立の登記を行うことから法人は始まり、そして、破産手続きをすることで抹消することになります。そこから見えてくるのは国税庁の中小企業の設立から倒産までの期間を調査したデータですが、会社が設立してから存続する確率は5年後14.8%、10年後6.3%、20年後0.4%と新しく会社組織が設立されても10年後には10%を切ってしまうということです。
もし、個人で起業をした後ろ盾のない会社の「雇われ社長」として肩書を持つ場合、万が一事業が失敗した時の責任は取締役の「雇われ社長」が負うことになります。本来は自ら経営判断を下し、事業活動を指揮すべきであるオーナーが負うことになりそうですが、オーナーの指示に従っただけといっても、法的にはその指示に従うかの独自判断を下す権限と責任が取締役の「雇われ社長」にはあるのです。
■会社が犯した罪の責任
会社が法律を犯し不当な利益を得ていた場合や、従業員や第三者に対して損害を与えるような事をした場合、代表者が株主の利益を一方的に侵害する行為をして株主代表訴訟が起こされ場合は「雇われ社長」であっても法的に損害賠償請求され経営責任を負わされることもあるので、就任前にこれらについてはしっかりと確認しておくべきでしょう。
■連帯保証人というリスク
事業を立ち上げるときによくあることなのですが、金融機関から融資を受けることがあります。会社の連帯保証人になり新たに融資を受け、事業が赤字経営になった場合などには当該債務について支払いの義務を負うことになりますので注意が必要です。経営が悪化して会社が倒産した場合は、当然会社はその責任を果たすことができませんので、保証人が会社の債務を一括で返済していくことになります。
■解任のリスク
オーナー社長が解任されるとすれば法律に違反する行為をした場合や株主や社員への背任行為があった場合などよほど重大なことがない限りはありませんが「雇われ社長」は会社の経営についても絶対的な権限があるわけではないのですが、何か経営上の問題がある場合解任させられることになります。
■まとめ
このように「雇われ社長」には、リスクとなる要因を持ち合わせています。「雇われ社長」に就任する前に、なぜ自分が頼まれたのかと冷静に考え、また、会社の状況をしっかり調べたうえで了承するようにしましょう。