企業経営とギャンブル。この両者は完全に非なるものと言えるでしょう。しかし、将来の成果に対してリスクを負うという点に関しては、類似性を持ちます。その類似性を通して、経営者がギャンブルから経営に関して有益な学びを得るということは可能なのでしょうか。
経営とギャンブルの共通点
「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という、古代中国の兵法書・孫子の文言があります。その意味を広義で捉えるならば、「物事に取り組む際、それに関連するあらゆる情報を分析し、自身の能力についても把握していれば、失敗することは無い」と解釈されるでしょう。
これは、現代のビジネスにおいても当てはまる教訓として、経営に携わる方々に広く浸透している考え方と言えます。事業に携わる際、それを取り巻く状況について、自社側のスペックを含めて熟知していれば、リスクを回避し収益に繋がる道が見出されるというわけです。
様々な情報を論理的に解釈することによって将来を予測し、それを経営判断に活かす方法に相当します。
一方で、将来や未来の出来事に対する捉え方として、「運否天賦」という認識も存在します。意味としては「未来は何が起こるか解らない。全ては運で決まる」と解釈されます。
その運否天賦を象徴的に表す行為が、ギャンブルと言えるでしょう。
的確な分析・判断から未来像を導き出そうという方法論に基づいている経営と、運否天賦が支配的とも言えるギャンブル。
未来に対する捉え方としては相容れないと思われる両者ですが、共通する点があります。
それは、両者とも将来の利益に対してリスクを負う行為であるという点です。
将来のリスクについて、論理的判断分析からアプローチするのか、運任せとするのか、そういった捉え方の違いが両者に見られるわけです。
リスクを負うトレーニングとしてのギャンブル
経営においては、将来の成果獲得について、計画的に進める手法が正攻法とされます。しかし、いくら粗が無く論理的に構築された計画であっても、未来の出来事を完璧に反映させることは適いません。予想外な事態が発生し、計画とは全く異なる状況に陥ることも充分考えられます。100%未来を予知できない以上、常にリスクが伴うわけです。
如何に振舞おうとも必然的に付属するリスクに対し、それとどのように付き合っていくべきなのでしょうか?
その実践的な学びの1手段に挙げられるのが、ギャンブルです。
勝つか負けるか、見極める手段が無いまさに運否天賦に属する形式のギャンブルでは、プレイヤーは心理的プレッシャーに晒されます。つまり、未来の成否に関するリスクについて心理的圧力が加えられる状態となるわけです。
未来が100%予見できないという点では企業経営も同様であり、その予測できない未来について、経営者はプレッシャーに晒されているとも言えるでしょう。
それと同種のプレッシャーが生じるギャンブルを通して、リスクと精神力を鍛える効果が期待できるというわけです。
ギャンブルとの付き合いには注意が不可欠
リスクと向き合う精神修養としての一面もあるギャンブルですが、熱中し過ぎるのは禁物です。賭け事にのめり込むあまり本業が疎かになっては本末転倒です。加えて、ギャンブルで多額の負債を抱えてしまうと、経営者という職そのものも失いかねません。
あくまで、リスクとの向き合い方を学習する場として捉え、その範囲を逸脱しない心がけが重要です。
まとめ
経営者にとっては敬遠が無難と思われるギャンブル。しかし捉え方によっては、ここまで見てきたように、リスクとの向き合い方を修練する学びの機会ともなり得るでしょう。