個人で営む事業を新設立した法人に引き継ぐ事や、事業形態を変える事を「法人成り」や「法人化」といいます。
自営業の規模を拡大する際に伴う税金の節税対策や、相続税対策を加味して事業承継対策を講じる場合に使われる手法です。
最低資本金の規制がないので容易に法人化が可能に
新会社法が設立され、最低資本金の規制が無くなった事により、株式会社は1千万円、有限会社は300万円の資本金が最低でも必要だったのが現在は資本金1円でも株式会社設立が可能です。
資金的にも法人化する事は容易ですが、本当に得をするのかは慎重に考える必要があります。
営業戦略上での法人化のメリット
対外的な信用の拡大、家計との分離、経営者や従業員の意識改革、人員採用や定着率の向上などのメリットがあります。
税務戦略上での法人化のメリット
これまで事業所得として所得税が課税されていたものは役員給与として所得税が課税されます。役員給与なので事業税は必要なくなる上に、給与所得控除があるので所得を圧縮できます。
また、個人事業者なら配偶者や扶養家族に給与を支払う時には上限が設けられており、事前に届出も必要です。少額でも給与を支給すれば控除対象配偶者や扶養親族に含める事はできなくなります。
しかし法人なら家族が事業を手伝い給与を支払っても、一定金額なら配偶者や扶養親族を控除対象にする事が可能です。
他にも生命保険の経費化や退職金支給で税を軽減するなど、様々なメリットがあります。
・決算期も自由に設定可能
そして個人事業者は12月31日である決算期は、法人の場合は自分の都合に合わせて自由に選ぶ事ができます。なお、欠損金の繰越は、個人事業者が3年なのに対して法人は9年間です。
法人化した時のデメリットは?
ただし法人化すれば事務費は一時的に増大しますし、コストも個人よりは増えます。
例えば健康保険や厚生年金に加入する義務が生じ、従業員の保険料の半額を負担する事になりますので、法定福利費の負担が増えるという点には注意しておきましょう。
さらにこれまで掛かった費用だけ必要経費に入れる事ができた交際費も、法人化すれば資本金1億円以下で年間600万円の損金算入限度額が設けられていますので、それ以下だったとしても10%は損金算入できません。
また、赤字だとしても住民税の均等割は毎年かかる点も理解しておく必要があります。
事業承継のタイミングに法人化の検討を
法人化についてのメリットやデメリットを確認した上で、今後事業は個人ではなく法人として活動した方が良いと考えるなら、事業承継の必要性を感じたタイミングで検討してみてはいかがでしょう。