中小企業の後継者が、先代経営者から相続や遺贈、贈与によって非上場株式を取得した場合、その非上場株式にかかる相続税や贈与税の一部の納税を猶予・免除する制度が「事業承継税制」です。
後継者に現経営者から事業を引継ぐ時に、自社株式などを承継することで多額の相続税や贈与税が生じる場合があり、このことが障壁となって事業承継が進まないというケースもあるようです。
しかし事業承継税制によって、税金による負担の軽減を図ることが可能ですので認定されるまでの流れなどを確認しておきましょう。
事業承継税制の認定を受けるには?
事業承継税制を活用するには、例えば本店所在地が東京都にある場合は、平成29年4月1日からは東京都が申請・相談窓口になっていますので認定申請を行います。その後、税務署に納税申告するという流れです。
申告期限後5年間は、年1回、東京都に年次報告、税務署に継続届出書を提出します。また、5年を経過した後は、3年に1回、税務署に継続届出書の提出を行うことが必要です。
なお、平成25年度に施行された税制改正において、計画的な承継にかかる取り組みに関する事前確認が認定要件から外れたことで、事前確認を受けていないという場合でも申請はできます。
納税猶予を受けるために必要な要件とは?
事業承継税制で納税猶予を受けるためには、会社、先代、後継者、それぞれに必要な要件が細かく設けられています。一部ご紹介しますので確認しておきましょう。
●会社に対する要件
・中小企業者であること
・上場会社や風俗営業事業会社、資産管理会社でないこと
●先代経営者に対する要件
・会社の代表者であったこと
・相続開始の直前や贈与直前において、現経営者とその親族等が総議決権の過半数を保有し、その中で筆頭株主であること
・贈与時に代表者を退任していること
●後継者に対する要件
・相続開始時、または贈与時において、後継者とその親族等で総議決権の総議決権の過半数を保有し、その中で筆頭株主であること
・贈与時に20歳以上であること
・贈与直前において3年以上連続して役員であり、贈与日以降は代表者であること
・相続開始の直前に役員であり、相続開始から5か月後には代表者であること
なお、細かい要件は中小企業庁のWebページから、「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」にて確認しておきましょう。
事業承継における自社株式問題を解決できるかも?
中小企業にとって事業承継とは会社が今後も発展できるのか、それとも衰退してしまうかを決める大きな事柄です。
事業を成功すれば50点、承継に成功して100点満点と言われるように、事業承継に成功して初めて経営が成功したと言えるでしょう。
せっかく後継者候補がいても納税問題が妨げになり承継が進まなければ意味がありません。事業承継税制は、中小企業の事業承継が円滑に進むように発生する税金が軽減される制度なので活用すると良いでしょう。