経営者は、会社における様々な権限がありますがその分経営責任も重くなります。中でも第三者に対する損害賠償責任は非常に重く、企業にとっても信用を失い、膨大な損失が発生します。役員が損害賠償責任を負うケースについて詳しく見てみましょう。
【役員の損害賠償責任】
役員の損害賠償責任は会社法で下記のように定められています。
・役員は自身の任務を怠って、株式会社に損害を与えた場合は賠償責任を負う
・取締役の違法な自己取引は、その利益額が会社の損害額と推定される
・利益相対取引によって取締役が会社に損害を与えた場合、取締役はその任務を怠ったとみなされる
・役員等が職務を遂行する時に、悪意または重大な過失があった場合、第三者に対して損害賠償責任が生じる
【役員等の悪意・重大な過失とは】
役員等が職務を遂行する時に悪意、または重大な過失があった場合注意義務を怠らなかったことを自ら証明できない限り、第三者に対して損害を賠償する責任があります。
悪意や重大な過失には下記のようなものがあります。
「取締役及び執行役」
・取締役が株式の引き受け募集をする際に通知しなければならない重要事項について、虚偽または虚偽の記載をした場合
・計算書、事業報告書、附属明細書、臨時計算書に記載すべき重要事項について虚偽の記載、記録をした場合
・虚偽の登記
・虚偽の公告
「会計参与」
・会計参与が、計算書、附属明細書、臨時計算書、会計参与報告に記載すべき重要事項について虚偽の記載をした場合
「監査役、会計監査人」
監査役、会計監査人が監査報告や会計監査報告に記載、記録すべき重要事項について虚偽の記載、記録をした場合
【役員の賠償責任が免除されるケース】
一方で役員の責任が一部免除されるケースがあります。それは役員等が職務を行うときに義務違反を知らなかった場合で、かつ重大な過失がないときは賠償額から「最低責任限度額」を控除した額を株主総会の決議によって免除できます。
また社外取締役等が任務を怠った場合の損害賠償責任は定款で定めた範囲内で株式会社が定めた額と、最低責任限度額のいずれか高い額を限度額として決めることができます。
このように役員等には常に様々な賠償責任が生じます。中でも膨大な賠償請求を負うリスクは、第三者に対する損害賠償でしょう。取締役等は自身が負う責任について、十分理解し常に心にとめて日々の業務を行うことが大切です。