中小企業など、非上場企業が事業承継を行う時には、後継者に自社株式を取得させる必要があります。しかしいつどのような形で、現経営者から移転させるかがポイントになりますので、承継させる方法などをそれぞれ確認していきましょう。
自社株式を後継者に取得させる方法
自社株式を後継者に取得させる方法には、相続(遺贈)によるもの、生前贈与によるもの、また、売却による譲渡によるものがありますが、ここでは相続と生前贈与による自社株式の移転について考えて行きます。
相続や遺贈による方法
相続や遺贈による方法は、現経営者が亡くなって相続が発生した時に、相続財産の一部として自社株式も後継者が取得する方法です。
ただし遺言などを残していなければ、現経営者が希望した通りに移転させる事ができない可能性もありますので注意しましょう。
・後継者や会社の状況が変化している可能性
ただし相続はいつ起きるかわからないので、遺言書で残していたとしても実際に相続発生時には、後継者や会社の状況などが大きく変わっている可能性もあります。
そのため遺言書を残す場合には定期的に見直しや状況に応じた書き換えを行う事が必要になるでしょう。
・税額はどのように計算される?
また、相続税は相続発生時を基準に相続財産の評価額とそれに伴う税額を計算します。自社株式の評価額は業績や同業の株価によって変動する事があるので、この様な将来的な不確定要素が多い面は、相続と遺贈を対策として考えるのは危険とも言えるでしょう。
生前贈与による方法
では生前贈与の場合はどうでしょう。現経営者が自身の意志で実行できる事から、自社株式の評価額が低いタイミングで承継していく事を進める事ができます。
また、事前に贈与しておけば相続財産を減少させる事ができるというメリットもあるでしょう。
生前贈与の方法として、「暦年課税贈与」と「相続時精算課税制度」があります。
・暦年課税贈与
贈与税の基礎控除(非課税枠)年間110万円の範囲内で、数年に渡り贈与を行う方法です。
・相続時精算課税制度
少しずつではなく一度に多く財産を贈与したい場合に利用される方法で、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に対し、累計2,500万円までの財産なら非課税で贈与を可能とする制度です。
ただし贈与後の相続発生時には、贈与した財産も相続財産に含めた上で相続税額を計算する事になり、支払った贈与税分があれば相続税額から差し引かれる事になります。
贈与財産は相続税を計算する時のタイミングではなく、贈与された時の価額で評価されますので、先に贈与をしておけば相続発生時に株価が上昇していたとしても相続税に影響しないというメリットがあります。
ただし一度この制度を選択すると、暦年課税贈与は利用できなくなりますので、その点も踏まえて検討する様にしましょう。
状況に応じて良い方法の選択を
後継者に自社株式を取得させるために、どの方法を活用すれば良いかは現経営者や後継者、会社の状況などで異なります。最も良い方法を選択できる様に、不明な点は専門家などに相談しながら決める様にすると良いでしょう。