経営における人件費の適正な水準はどのように考える?

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経営者は自社のために尽くしてくれる従業員に対しては、できるだけ高い賃金を払ってあげたいという経営者は少なくないと思います。
しかしそのような気持ちがあっても、経営上、できるだけ人件費は抑えたいという部分も持ち合わせることでしょう。
他社ではどのくらいの人件費が支払われているのか、一度確認してみたいと感じている経営者もいるかもしれません。
そこで適正な人件費の金額など、いくらくらいなのかなど確認していきましょう。

適正な人件費の目安を知るために
会社が新たに創りだした価値は「付加価値」です。
付加価値は、最終的に色々な費用に分配されることになりますが、最終的に残ったものが「利益」です。
中でも人件費に対する分配は付加価値のうち多くを占めるので、企業が経営する上で重要な指標となります。
付加価値に占める人件費の割合を「労働分配率
と言いますが、次の計算式で算出することができます。
「労働分配率(%)=人件費/付加価値×100」
ここでの人件費は、給与賃金手当(給与や労務費)、賞与(引当金繰入)、福利厚生費(法定福利費を含む)、退職給付費用(引当金繰入)、役員報酬、役員退職慰労引当金繰入、役員賞与などを合わせたものです。

労働分配率を考える時に注意したいこと
労働分配率がどのくらいであれば適正なのでしょう。
労働分配率は低いほど利益が出やすく、収益性を高めることになります。
労働分配率を良くするためには、人件費を下げることで成立しますが、人件費を引き下げればやる気のある従業員の士気を低下させることになり、最悪の場合には条件の良い他社に転職してしまうことを促すことになるかもしれません。
そうなれば付加価値は低下し、労働生産性自体が悪化してしまう可能性があるので、単純に人件費を下げれば良いという事にならないでしょう。
確かに労働分配率は重要な経営指標ですが、指標のみに捉われ過ぎると従業員が犠牲にしてしまいます。地域平均人件費を支払い、付加価値自体を向上させることが必要です。

適正な労働分配率は?
なお、労働分配率は業種や会社の規模によって異なりますが、現在、上昇または下降、どちらの傾向にあるのかを考えていきましょう。
一般的な労働分配率判断として、50%以下は良好、60%前後が普通、70%以上だと不良と判断することを目安にしましょう。
他社平均以上を目指しながら、50%台の労働分配率を目指す経営が従業員満足(ES)には重要です。

従業員の士気を下げずに生産性向上を試みる
仮に労働分配率の水準が低く、さらに現在従業員に支払っている給与が地域人件費の相場より低い場合、付加価値に占める人件費を増やすことが出来る余地があると判断できます。
労働分配率を引き上げて従業員の士気を高めることで、生産性を向上させる対応を検討しましょう。
反対に既に労働分配率が高い場合は企業の生産性が低いので、企業変革や改善の余地が十分にあるとも考えられます。