中小企業に「所有と経営の分離」は存在する?

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株式会社を設立する場合には出資者を募りますが、出資した人は発行した株式を保有する株主になり、会社の所有者とも言える存在となります。
そして所有者である株主から経営を任された人たちが取締役であり、誰を取締役にするのかを株主が集まって株主総会で選びます。
株主は、経営を専門とする取締役に対して、会社の経営を委任したことになりますが、これを「所有と経営の分離」と言います。

中小企業で所有と経営は分離されている?
中小企業の場合、株主と取締役が同一であることが多いので、所有と経営の分離と言われてもピンとこないかもしれません。
ただ、一昔前までは取締役は3名以上(取締役会の設置)、それに監査役1名を必ず設置する必要があったため、全く経営には関わらない人が名ばかりの取締役や監査役というケースも多々あり、数合わせのために役員になってもらい、報酬を支払うといったことも見られました。

中小企業には監査役は必要ない?
そもそも監査役の業務は業務監査と会計監査なので、しっかりと取締役が業務を行っているのかを目を光らせて確認する仕事です。
そのように監査役が目を光らせている中、取締役は経営を行いながら業績を上げ、株主に配当を出せるようにしていく必要があります。
しかし株主と取締役が同一の場合、自分が決めて行い、仮に失敗すれば全て自分の身に降りかかることから監査役を置く必要性はないと言えるでしょう。

会社法で監査役や取締役会の設置は不要に!
このような流れから、会社法で、株式譲渡制限付会社の場合は監査役を設置しなくてもよいと決まっていますし、取締役も1名で良く、通常は2年である任期も10年まで伸ばすことが可能です。

実際には経営者が経営を支配することになる?
株主は株主総会に出席して、誰が会社を経営するのか、重役は誰に任せるのかを選ぶことができますし、決算を承認するなどで経営に参加して確認する権利があると言えます。
しかし規模の大きな会社の場合など、実際には株主がその権利を行使することはできず、経営者に支配されている状況とも言えるでしょう。
これは、巨大化する会社の株主数増加により、株主一人あたりの持ち株比率の低下で、株主1人の株主総会での影響力が薄くなったことが原因と考えられます。
さらに企業の経営が専門・複雑化していく中、ただ出資だけを行う株主が経営を確認するだめの知識や時間が持てていないという事も理由として考えられるでしょう。

今後企業規模拡大の予定があるのなら・・・
中小企業の場合には、株主と経営を行う取締役が同じであることが多いため、あまりこのような事態に陥るケースはないでしょうが、今後、会社規模を拡大していくことを検討しているのなら知っておくと良いでしょう。