損害賠償を負うのは下請?それとも元請?
自社が下請専門の会社だから損害賠償への備えは必要ないと考える建設会社もあるようですが、下請会社でも損害賠償に対する備えは検討したほうが良いでしょう。その理由は、事故が発生した場合に損害賠償責任が発生するまでの流れが関係します。
施工した会社へ損害賠償責任は発生する
ビル建設工事中に建設機械が倒れて隣接民家に損害を与えた事故が発生した場合、家の損害について賠償責任を負うのはビル建設に従事した施工会社でしょう。そして施工していた会社が元請会社の下請として工事していた場合、実際に施工を行った下請会社だけでなく元請会社にも賠償請求が行われます。
元請会社にも賠償請求が及ぶ理由
損害賠償責任により発生した賠償金額が多額になることがあります。実際に事故を起こしたのが下請という立場の会社であったとしても、その会社の資金力では補償が不可能と判断された場合、元請会社に使用者責任を問う形で賠償責任を請求するというケースが多くなっています。
元請会社が賠償責任を負うケース
下請を雇っていたから全てのケースに元請会社が責任を負わなければならないわけではありません。元請会社が責任を負うのは、下請会社が元請会社の作業指示を受けていたり、場所や時間の拘束を受けている場合です。つまり、指揮命令監督下にある状態であったかなかったかがポイントとなります。
以前は元請会社の加入保険で補償されていたけれど…
例えば死亡事故など重大事故により下請会社に賠償責任が発生した場合、これまでであれば元請会社が加入する第三者賠償責任保険で支払われることがほとんどでした。しかし最近になると保険を使えば翌年度の保険料が増額されることになるため、元請会社から被害者へ損害賠償金を支払い、その後下請会社へ負担を求償するというケースが増えつつあります。そうなれば下請会社は賠償資金を準備しなくてはなりません。
第三者賠償責任保険への加入の検討を
損害賠償金額が高額になった場合、その資金調達はどうやって行うのかという問題が発生するでしょう。相手との話し合いも自社で行わないとなると、どこで折り合いを付けるべきかという判断も非常に困難です。解決にも労力と時間がかかるため、少ない保険料で高額な補償が準備できる第三者賠償保険に加入しておくと安心です。第三者賠償責任保険は、建設工事や土木工事など工事請負業者が業務遂行中に、偶然の事故で他人に損害を与え法律上の賠償責任を負うことになった場合補償される保険です。元請や下請を問わずに加入者が請け負う工事が補償対象となりますし、工事中だけでなく引き渡し後の事故も補償対象になるため安心です。